研究課題/領域番号 |
19H03021
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
渡邊 宇外 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (70337707)
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研究分担者 |
高田 克彦 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 教授 (50264099)
安江 恒 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (00324236)
内海 泰弘 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50346839)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 樹木ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
植物の成長と形質の発現には、ミトコンドリアゲノムが大きく関係することが示されている。樹木の二次木部の組織構造は、木材の材質特性を決める最も重要な形質である。樹木において、ミトコンドリアゲノムが成長と二次木部形成に与える影響については未だに明らかとなっていない。本研究課題は、樹木におけるミトコンドリアゲノムと形成層活動および二次木部形成の関係を明らかにすることを目的とする。本研究課題では、カラマツおよびアカエゾマツについて、ミトコンドリアゲノムの構造決定・特徴抽出、ミトコンドリア遺伝子の発現定量解析、二次木部の年輪解析、形成層および二次木部の顕微鏡観察を行う計画である。これらのうち、令和元年度は、ミトコンドリアゲノム解析に用いるカルス細胞の誘導と培養、顕微鏡を用いた形成層内のミトコンドリアの分布状態の観察について重点的に実施した。カラマツについては、2カ所の産地からそれぞれ1個体を選び、葉試料からカルス誘導を行った。アカエゾマツについては、同樹齢で成長状態の異なる3個体を選び、葉試料からカルス誘導を行った。いずれの樹種・個体についても、オーキシンおよびサイトカイニンの濃度を調整した培地上でカルスが誘導された。一方で、植え継ぎ後にカルスが比較的早く褐色化し、その後増殖が停止するものが多く見られた。形成層化学固定試料から作製した切片を市販の専用試薬を用いて蛍光染色し、形成層内におけるミトコンドリアの存在状態等を観察することができた。ミトコンドリアの分布は、分裂過程にある領域から拡大過程・二次壁形成過程にある領域にかけて増加する傾向が認められた。また、放射組織ではミトコンドリアがより多く存在する傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、誘導された2樹種のカルス細胞からミトコンドリアを分画し、それに含まれるゲノムDNAの解析を行う予定であった。しかしながら、想定以上にカルスの増殖が遅く、また安定的に増殖・維持させることが難しく、解析に十分な量のカルスが得られなかった。また、得られた少量のカルス細胞を用いてミトコンドリアゲノムDNAの次世代シークエンス解析(NGS解析)を行ったが、ミトコンドリア以外のゲノムの混入が多く、目的とする解析が困難であった。これらのことから、令和元年度において2樹種のミトコンドリアゲノムが決定できない状況であった。一方、2樹種の各個体から形成層試料の採取を順調に行うことができ、その化学固定試料から形成層内のミトコンドリアの分布を観察することができた。また、凍結固定切片からレーザーマイクロダイセクションにより形成層領域を採取し、発現解析に必要な遺伝子を回収することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、ミトコンドリアゲノムDNAのNGS解析が研究の核をなすことから、これの推進について重点的に対応する。カラマツおよびアカエゾマツのカルスの増殖が想定以上に遅いことから、次の成長シーズン初期に多くの葉芽からカルスを誘導し、それからミトコンドリア分画およびゲノムDNAの抽出を行う。また、葉試料から直接ミトコンドリアを分画し、ゲノムDNAの抽出を行う。この場合、ミトコンドリア画分にプラスチドゲノムDNAが多く混入してくることが想定されるため、NGS解析により得たリードデータからミトコンドリアゲノムに由来するデータを効率的に分離する方法を検討する。
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