研究課題/領域番号 |
19H03022
|
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
高田 直樹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 森林バイオ研究センター, 主任研究員 等 (90605544)
|
研究分担者 |
永野 聡一郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (50753836)
山岸 祐介 北海道大学, 農学研究院, 助教 (80770247)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 二次壁 / 表層微小管 / 木部繊維 |
研究実績の概要 |
二次壁はセルロースミクロフィブリルの配向角度の違いにより3層に分けられる。セルロースミクロフィブリルの配向は細胞膜直下の表層微小管により制御されており、表層微小管とセルロースミクロフィブリルの配向は互いに相関している。しかし、木部細胞の発達過程でこれらの配向がどのように制御されているかについては未だ多くの謎が残されている。研究代表者は木部繊維において二次壁の肥厚を促進する新たな転写制御機構を見出しており、その制御機構を応用した木部繊維・単一細胞転写誘導システム(培養細胞から木部繊維を分化誘導するシステム)を開発している。本研究では培養細胞が木部繊維へと分化・発達する過程を顕微鏡で連続観察することにより、二次壁形成中の表層微小管の空間的・時間的変動を解析する。それにより、木部繊維においてセルロースミクロフィブリルの空間配置を決定する細胞内分子機構の解明を試みる。 本年度はポプラ形質転換体(TUA-GFP+TF26-GR)の懸濁培養細胞を誘導剤(デキサメタゾン)で処理を行い、1日おきに表層微小管の空間配置を観察した。その結果、処理後1日目から表層微小管の密度が増加し、2日目には表層微小管が細胞長軸に対して約90度の角度で高密度に配置していた。その後、表層微小管の配向角度は約90度を数日間維持し、処理後4日目には細胞長軸に対して約45度に配向変化する細胞が確認された。しかし、配向変化を示す細胞は数%以下であり、非常に低い割合であった。 当初の計画と関連する研究として、透過型電子顕微鏡を用いてtf26 tf26bポプラ二重変異体の二次壁層構造を詳細に観察することにより、当該変異体では二次壁S2層の形成が著しく抑制されていることを発見した。この結果は、TF26およびTF26bがS2層の形成を制御する転写因子であることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木部繊維・単一細胞転写誘導システムを用いて、二次壁形成中の表層微小管の空間的な変化を数日間観察することに成功している。現在、表層微小管の平行性、密度、配向角度を定量化するために既存の画像解析ソフトウェアの修正作業を行っており、来年度以降は取得した画像から表層微小管の構造を定量化することができる。 また、関連する研究テーマとして、tf26 tf26bポプラ二重変異体の壁層構造の観察、TF26遺伝子の下流で働く遺伝子の網羅的解析、針葉樹スギを用いたTF26オルソログの機能解析に着手した。
|
今後の研究の推進方策 |
転写誘導システムを導入したポプラ組換え体から誘導した懸濁培養細胞を用いて、表層微小管のタイムラプスイメージングを行うとともに、取得した画像を用いて表層微小管の平行性、配向角度、密度などを定量化する。これらの結果をもとに、木部繊維において二次壁形成中に生じる表層微小管およびセルロースミクロフィブリルの空間配置を制御する機構について考察する。 また、透過型電子顕微鏡を用いたtf26 tf26bポプラ二重変異体の壁層構造の観察、針葉樹スギを用いたTF26オルソログの機能解析を継続して行う。さらに、二次壁形成中の表層微小管の空間構造や動態に影響を与える可能性のある遺伝子を選定し機能解析をすすめることにより、二次壁形成を制御する新たな遺伝子の同定につなげる。
|