研究課題
本研究は,最新の環境DNA技術を駆使して,水産資源生物の繁殖や被食,加入といった生活史イベントを検知し,そのプロセスを明らかにすることを狙いとしてきた.本年度は,マナマコの被食に伴う環境DNA放出について,水槽実験とフィールド調査を行った.栽培漁業における放流サイズの稚ナマコを被食者,その主要な捕食者とされるイシガニを捕食者とした実験では,被食直後の水槽から平時の1000倍以上の環境DNAが検出された.続いて,福井県のマナマコ放流現場で昼夜の採水・環境DNA分析を試みた結果,放流直後には検出量は増大したものの,イシガニを含む甲殻類の活動が活発になる夜間には環境DNA量の増大は認められなかった.このことから,調査を行なった海域においては,イシガニによる捕食圧は比較的低いものと推察された.マアジを対象として,繁殖行動に伴う環境DNA放出の詳細を検討するため,本種の精子に由来する環境DNAのサイズの変化を明らかにした.続いて本種に催熟ホルモンを打注して産卵させ,環境DNA濃度の上昇を確認した.さらに,舞鶴湾において毎月1回新月大潮時に採水を行ない,7月に顕著な環境DNAの上昇を認めた.この時季を産卵期と考え,プランクトンネットにより魚卵を採集し,DNAメタバーコーディングに供した結果,マアジと同定される受精卵が検出された.以上から,産卵調査における環境DNA分析の有用性が示された.日本海の重要な水産資源であるズワイガニの種特異的プライマーが完成した.調査船から採水された海水を分析に供したところ,底層の採水試料から本種のDNAが検出された.今後は人工魚礁の有効性を検討する上で本プライマーを利用する予定である.磯焼けの原因生物とされているアイゴについて,種特異的なプライマーが完成した.これを用いて特に藻場の生態系管理を推進する研究を計画している.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Environmental DNA
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