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2019 年度 実績報告書

海洋における菌類様原生生物の分布と生態系・有機物動態への寄与

研究課題

研究課題/領域番号 19H03033
研究機関愛媛大学

研究代表者

大林 由美子  愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教 (60380284)

研究分担者 高尾 祥丈  福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (00511304)
宗林 留美 (福田留美)  静岡大学, 理学部, 准教授 (00343195)
吉川 尚  東海大学, 海洋学部, 教授 (80399104)
松浦 弘行  東海大学, 海洋学部, 准教授 (50459484)
西川 淳  東海大学, 海洋学部, 教授 (10282732)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードラビリンチュラ類 / 細胞外加水分解酵素 / 有機物分解 / 海洋生態系 / 微生物群集 / 物質循環 / 微生物食物網
研究実績の概要

海洋漂泳区における生物地球化学的な物質循環プロセスのなかで、有機物の分解・分子変換に海水中の従属栄養細菌が大いに寄与していることは知られているが、真核微生物の寄与についてはよくわかっていない。本研究では、単細胞真核微生物である菌類様原生生物ラビリンチュラ類に注目し、海洋漂泳区での有機物分解・変換の担い手としてのそれらの寄与と、食物連鎖(生態系)のなかでのその位置づけを評価することを目指している。
初年度は、主に(1)ラビリンチュラ類のもつ細胞外有機物分解能の解析と、(2)ラビリンチュラ類現存量見積もり法の高効率化と信頼性明示化のための検討について、いずれも複数の系統群の分離株(対数増殖期、定常期)を用いた解析で成果が得られた。(1)では、各株について液体培地中の細胞外プロテアーゼ活性プロファイルを分析した。用いたすべての株で、対数増殖期にも定常期にも、アミノペプチダーゼ型およびトリプシン型の細胞外プロテアーゼ活性が認められた。解析の結果、ラビリンチュラ類は、栄養豊富で活発に増殖している状況においても、貧栄養で定常的な状況においても、水中の有機物分解・分子変換に貢献しうる可能性が強く示唆された。(2)では、11系統群の株について染色後フローサイトメトリーによる検出・計数を検討した。いずれの株も検出・計数は可能であった。しかし、染色による蛍光強度が株によって異なること、同じ株の対数増殖期と定常期でも異なること、対照として用いた酵母細胞とサイトグラム上での区別が難しい株もあることなどがわかり、実海水微生物群集中のラビリンチュラ類定量への適用に向けて、さらに検討しておくべき事項も浮彫となった。
また、上記の成果の他に、実際の海洋漂泳区での生態系構造解析に向けての調査で、真核微生物の捕食者となっている可能性もありうる他の生物群の動態に関しても新しい知見が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では海洋漂泳区での実態を知ることを目指しているが、実際の海洋生態系ではいろいろな要素が複雑に絡み合っており、現場観測だけでは実態をつかみにくいのが現実である。そのため、本研究では、観測や実海水試料の解析とともにラビリンチュラ類分離株を用いた解析も行っている。本年度の主要な成果は、いずれも分離株を使って得られたものであるが、海洋漂泳区での実態の解析につながる重要な情報が得られた。
フローサイトメーターを用いた海水中のラビリンチュラ類定量法については、方法の確立は未完了であるものの、活用できる可能性があることがわかった。実海水試料への適用のためにはさらなる検討が必要であるが、これらの検討と信頼性評価を進め、実際の海水中のラビリンチュラ類現存量評価に繋げていく。

今後の研究の推進方策

海水中のラビリンチュラ類現存量見積もり法は、フローサイトメーターを用いる方法について、本年度にラビリンチュラ株を用いて実施した結果を踏まえて、方法の一部改変と再検討をさらに進め、海水試料への適用検討と信頼性評価等を行ったうえで、実海水中のラビリンチュラ類現存量評価へつなげていく。そのうえで、物理・化学環境や、ほかの生物群との関係の考察を行う。
食物網のなかでのラビリンチュラ類の位置づけに関する情報を得るためにメタ遺伝子解析の手法を用いた動物プランクトン消化管内容物の解析を試みる。また、実試料の解析とともに、同様の手法を用いた研究ですでに公表されているデータもできるだけ集め、考察材料とする。
ラビリンチュラ類の細胞外有機物分解能のうち、細胞外プロテアーゼプロファイルについては現在までに分離株を使って多くの情報が得られたが、一部の分類群ではまだ不十分なので、株を用いた解析を継続し、すでに得られている情報と合わせてまとめる。さらに、プロテアーゼ以外の高分子有機物分解酵素活性についても分析を試み、ラビリンチュラ類の細胞外有機物分解能について、その特徴を従属栄養細菌とも比較して考察する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件)

  • [雑誌論文] High growth potential of transiently 0.2-μm-filterable bacteria with extracellular protease activity in coastal seawater2019

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Obayashi, Satoru Suzuki
    • 雑誌名

      Plankton and Benthos Research

      巻: 14 ページ: 276-286

    • DOI

      doi: 10.3800/pbr.14.276

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 菌類様原生生物ラビリンチュラ類の細胞外プロテアーゼ2019

    • 著者名/発表者名
      大林由美子・高尾祥丈
    • 学会等名
      2019年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会
  • [学会発表] 駿河湾沖合域および折戸湾における海産枝角類の個体群動態2019

    • 著者名/発表者名
      剣持瑛行・松浦弘行・吉川 尚・宗林留美・大林由美子・西川 淳
    • 学会等名
      2019年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会
  • [学会発表] 駿河湾におけるメソ・マクロ動物プランクトンの季節群集とその生物量,生産速度2019

    • 著者名/発表者名
      伊東 宏・松浦弘行・吉川 尚・宗林留美・大林由美子・西川 淳
    • 学会等名
      2019年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会
  • [学会発表] 駿河湾沖合域における枝角類各種の出現パターンと体長組成2019

    • 著者名/発表者名
      剣持瑛行・松浦弘行・吉川 尚・宗林留美・大林由美子・西川 淳
    • 学会等名
      日本海洋学会2019年度秋季大会
  • [学会発表] Responses of bacterial communities and extracellular enzyme activities to addition of protein or free amino acids in the subtropical and subarctic North Pacific2019

    • 著者名/発表者名
      Obayashi Y, Suzuki S, Hamasaki K
    • 学会等名
      PICES-2019 Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Population dynamics of marine cladocerans in the offshore area in Suruga Bay, Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Kenmochi A, Matsuura H, Yoshikawa T, Sohrin R, Obayashi Y, Nishikawa J.
    • 学会等名
      PICES-2019 Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Life history and food-habit of a lophogastrid Gnathophausia longispina in Suruga Bay, Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Nishikawa, J., Yonekubo, S., Yoshikawa, T., Matsuura, H., Sohrin, R., Obayashi, Y.
    • 学会等名
      PICES-2019 Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Mass occurrence and its ecological significance of marine cladocerans in offshore Suruga Bay, Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Kenmochi A, Takayanagi K, Matsuura H, Yoshikawa T, Sohrin R, Obayashi Y, Nishikawa J
    • 学会等名
      4th Asian Marine Biology Symposium
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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