研究課題/領域番号 |
19H03037
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
木元 克典 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 主任研究員 (40359162)
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研究分担者 |
山口 篤 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (50344495)
下島 公紀 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70371490)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ISFET pHセンサ / 海洋酸性化 / 石灰化生物 / 有殻翼足類 / 生態的可塑性 / 生物影響評価 / マイクロフォーカスX線CT |
研究実績の概要 |
本研究は以下の2つのパートにより遂行される。ひとつめはISFET半導体製作班と、もうひとつは海洋酸性化生物影響評価班であり、両者は連携しつつ、それぞれの目的に沿った研究を実施する。初年度は以下の点について重点的に研究を実施した。 1)ISFET半導体開発のための各種調査及び試作。ISFET半導体製作には品質の高い製品管理と、試行の繰り返し及びその厳密な原因究明が必須となる。このため九州工業大学と連携しこれを行うこととした。九州工業大学はマイクロ化総合技術開発センターを付置機関としており、ここで半導体の試作から完成まですべてを行うことができる。本年度はpHセンサとしての特性をもつISFET作成のための試作までを実施した。これと同時並行して、市販のISFETを用いた電極を作成し、2019年12月より紋別港の岸壁直下水深約6m部分にセンサーを固定し、年間を通したpH/pCO2観測を開始した。これにより、長期間にわたるセンサの耐久試験を行うとともに、海氷下のpH/pCO2のモニタリングを行うことが可能となる。最初のセンサー回収は2020年度初旬を予定している。 2)生物影響評価班は、紋別沖オホーツク海をターゲットとし、2019年6月末および12月の2回にわたりに海洋調査と石灰化生物採取を実施した。 6月は春に孵化したアラゴナイト殻をもつ有殻翼足類の幼生および幼体を採集できた。これらの試料は殻密度計測に供されるとともに、海水の化学的性質との比較を行う予定である。なお、この時の様子は地元の新聞社「紋別民友新聞」に報道された。なお、これに先行して実施したオホーツク海調査では、NHK北海道局の取材を受け、観測の様子が道内において放映された。 上記の結果の一部について、国際学会(3件)で口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度はISFET製作拠点の策定と、生物影響評価のための試料採集をそれぞれ独立に行ったが、予定していた所定の成果を得ることができた。特筆するべきは、当初予定していなかった紋別沖観測ステーションを立ち上げることができたことであった。本来このステーションはISFET試作が成功し、電極をくみ上げたのちに実際の海水中で実験を行うことになっていたが、市販のISFETを使った電極を作成し、先行してセンサーの係留試験を行うことで、センサの耐久試験についての情報を得ることができると同時に、海氷の下の海水のpH情報も得ることができる可能性がある。なお、この紋別沖観測ステーションは、国内の沿岸海洋酸性化観測コミュニティにも周知し、日本におけるもっとも北に位置する観測拠点としての登録も行った。さらに、本研究に関係した殻密度計測の結果について、3件の国際学会で発表を行った。以上のことから、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、以下の予定で研究を実施する。 1)センサー開発班:引き続きISFET製作を行い、その性能試験を実施してゆく。可能であれば、施策を行ったISFETのモールド(ボンディング)加工を行い、実際の海水中での試験を行いたいと考えている。 2)海洋生物影響評価班:紋別オホーツク海を引き続きターゲットとし、沿岸域の海洋酸性化の実態解明のため、炭酸系モニタリングを目的とした海水の採取と、センサーによる観測結果を比較してゆくとともに、生物影響評価を行うための生物採集を実施する。生物影響評価には、マイクロX線CT装置を使った殻密度計測に加え、形態情報の精密な取得と遺伝的多様性についてその対応関係を明らかにする。
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