研究課題/領域番号 |
19H03045
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 道生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (10647655)
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研究分担者 |
永田 宏次 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30280788)
豊福 高志 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭技術開発プログラム), 主任研究員 (30371719)
川野 潤 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (40378550)
木下 滋晴 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40401179)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオミネラリゼーション / アコヤガイ / 真珠 |
研究実績の概要 |
本研究は、アコヤガイの貝殻の真珠層形成において、①「有機薄膜の分泌調節」、②「有機薄膜の自己組織化」、③「炭酸カルシウム結晶成長制御」の3つのパートに分け、それぞれについて研究を進めることで、真珠層形成の分子メカニズムについて明らかにすることを目的としている。①「有機薄膜の分泌調節」について、2019年度にデザインしたキチン合成酵素の抗体を用いて、外套膜切片に対して局在解析の条件検討を試みた。固定化方法の検討、樹脂の種類などを検討し、最もシグナルが観察される条件を見出した。この条件を用いて、現在は超薄切片を作製し、電子顕微鏡内で金ナノ粒子を用いて、キチン合成酵素の局在解析を行う方法を試みている。②「有機薄膜の自己組織化」について、分泌されたキチンと強固に結合し、有機薄膜形成に強く関係すると思われるメチオニンに富む領域を有するNU-5タンパク質を、特殊なタンパク質抽出法を用いて真珠層より見出した。③「炭酸カルシウム結晶成長制御」について、真珠層の炭酸カルシウム結晶形成に関与するタンパク質であるPifの繰り返し配列であるDDRKモチーフが、どのように炭酸カルシウムと相互作用するのかNMRを用いた構造解析を行った。DDRKペプチドのみを水溶液に入れた場合と、DDRKペプチドと炭酸カルシウム粒子を入れた状態でROESYスペクトルを測定し、相関のあるシグナルのアサインメントを行い、構造計算に用いた。酸性残基の側鎖がカルシウムイオンと、塩基性残基の側鎖が表面の水分子と相互作用し、伸張するようにタンパク質が表面を覆うようなモデルを提唱できる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各それぞれのパートにおいて、新たな知見を得ることに成功し、着実にデータを積み上げていると感じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、アコヤガイの貝殻の真珠層形成において、①「有機薄膜の分泌調節」、②「有機薄膜の自己組織化」、③「炭酸カルシウム結晶成長制御」の3つのパートに分け、それぞれについて研究を進めることで、真珠層形成の分子メカニズムについて明らかにすることを目的としている。①「有機薄膜の分泌調節」について、超薄切片に対する再現実験を進める。特に、電子顕微鏡レベルでの高分解の画像では、切片の質が非常に重要であり、いくつも切片を作製し、質の良いデータを取ることが重要になる。そのため2021年度以降もも繰り返しサンプリングと切片作製を続け、電子顕微鏡内で局在解析を行う方法を試みる。②「有機薄膜の自己組織化」について、アコヤガイ貝殻の自己組織化する有機薄膜にはメチオニンに富む領域が存在することが多く、このメチオニンに富む領域の機能と構造を合成ペプチドなどを用いた実験により明らかにする。③「炭酸カルシウム結晶成長制御」について、DDRKペプチドと混合する炭酸カルシウムのナノ粒子について、粒子径の大きさや多形がどの程度影響を与えるのか、まだ不明瞭でであるため、より多くの条件の検討を行う必要がある。また、構造計算の手法についても、多くの検討の余地があるため、続けて解析についても精査をする必要がある。
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