研究実績の概要 |
本研究では、近年のIHNウイルス強毒化の要因を解明することを目的とし、① 毒力の異なる分離株の特性解明、② 毒力の異なる分離株の持続感染性、③養殖親魚のウイルス保有および疾病発生状況を検討する。 2022年度には、②:昨年度、死亡率が低い感染群で持続感染が成り立つ傾向があることから、強毒株を用いて高濃度と低濃度のウイルス攻撃の感染実験を行い、ニジマス稚魚の死亡率の差による生残魚における持続感染の成立について調べた。高濃度群と低濃度群の死亡率は80.0%とで45.3%であった。死亡が終息した感染45日後および139日後における生残魚からウイルスは分離されなかった。さらに、生残魚の持続感染について、感染53日後から129日後まで同居法のよりウイルス検出を行ったが、両群ともに検出されなかった。感染45日後と139日後の血中抗体価および免疫関連遺伝子(Mx1, GATA3, Tbet, IL-4/13A, IL-4/13B1)の発現解析を調べたところ、両群ともに有意に高い血中抗体価を示し、IL-4/13 B1遺伝子の発現量は感染45日後の高濃度群を除き有意に低かったが、それ以外の遺伝子では有意差は認められなかった。強毒株では持続感染が発生しにくいこと、さらに、その発生抑制には抗体が大きく関与していることが示唆された。 ③:初産の親魚群(2歳)のウイルス保有調査を成熟前と産卵時に行ったところ、成熟が始まる9月では、親魚12尾(GSI 2.6-8.4)からウイルスは分離できなかったが、11月以降の産卵魚12尾中7尾の体腔液からウイルスが分離された。親魚では産卵直前にウイルスに再感染することが示唆された。
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