研究課題
本研究は、「遺伝的性決定」と「環境依存的性決定」の2つの性決定機構の特徴を完全に併せ持つモデル魚を用い、その共在機構の全容解明を目指すものである。本年度はトウゴロウイワシ目ペヘレイを用い、「課題2:性決定遺伝子および性決定関連遺伝子の発現制御機構の解明」、「課題3:ゲノム編集技術を用いた遺伝的性決定因子の機能破壊と環境依存型性決定機構への影響調査」、「課題4:遺伝的 vs 環境依存的性決定機構におけるBPG軸の発現遺伝子の網羅的解析」に取り組んだ。課題2では、昨年度までに作成したamhaおよびcyp19a1aの各転写制御領域とヒト胎児腎細胞由来のHEK293細胞を用いてルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、コルチゾールはamha遺伝子の転写活性を上昇させるが、同様にcyp19a1aの転写活性も上昇させる可能性が示唆された。また11-KTはcyp19a1aの転写活性を低下させる可能性も示唆された。課題3では、XX個体を用いてamha遺伝子の機能破壊に取り組み、高頻度に変異を導入したF0世代を得た。それらを雄化誘導水温である29℃で飼育したところ、高頻度でamhaに変異導入されているにも関わらず100%の個体がオスに性転換した。従って29℃ではAMHシグナル系を阻害したとしても、コルチゾール/11KTといったその他の雄化経路により性転換が誘導される可能性が示唆された。さらに、課題4では、雌化誘導水温である17℃および雄化誘導水温である29℃で仔稚魚を飼育し、前者からはXX-雌とXY-性転換雌の間で発現量に差がある遺伝子、後者からはXY-雄とXX-性転換雄の間で発現量に差がある遺伝子を単離した。その結果、BPG軸においてXY-性転換雌で有意に発現上昇する16遺伝子、XX-性転換雄で有意に発現上昇する17遺伝子を得た。これら遺伝子は今後その機能を継続して解析していく予定である。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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