研究課題
本研究課題では、シングルセル解析系を性転換モデルに導入し、魚類の成体生殖腺の性的可塑性の起点となると考えられる生殖幹細胞および未分化体細胞を詳しく解析することにより、細胞集団に含まれる個々の細胞の性的可塑性に関わる機能、および生殖腺の転換に関わる細胞変化のメカニズムを明らかにする。本年度は生殖腺の性的可塑性の起点となる生殖幹細胞および未分化体細胞について、シングルセル解析に基づいた細胞の遺伝子発現パターンと性転換に伴う変化を明らかにした。具体的には、生殖幹細胞については、卵巣ではoct4の発現に特徴付けられる細胞が多数を占め、性転換の開始に伴いoct4に加えてnanogを特徴的に発現する細胞群が顕著に増加した。一方、未分化体細胞については、卵巣ではoct4とsox9の特徴的な発現を示す細胞集団として存在し、それに加えてfoxl2を発現する細胞集団も認められた。さらに性転換の開始に伴い、それらの細胞集団に加えてdmrt1を発現する細胞集団が出現した。このことから、卵巣から精巣への転換に伴い、未分化体細胞を起点として顆粒膜細胞への分化パターンから、セルトリ細胞への分化パターンへと切り換えが起こることが示唆された。さらに、雌雄異体魚の海産モデル魚であるカタクチイワシについても卵巣と精巣においてOct4を発現する生殖幹細胞の存在が認められ、その単離、培養に成功している。また、in vitroの器官培養実験を行った結果、ホシササノハベラでは卵巣組織から精巣組織への変化が起こるのに対し、カタクチイワシでは卵巣組織が維持されたことから、生殖腺体細胞に機能的な違いがあることが考えられた。さらに、小型モデル魚のメダカにおいては性ステロイド受容体のノックアウト系統などを用いた解析から、エストロゲンが生殖腺形成時の生殖細胞の性差に関与していることを明らかにした。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件)
Nature Communications
巻: 14 ページ: 1428
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https://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/marinebiology/