研究課題/領域番号 |
19H03050
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中尾 実樹 九州大学, 農学研究院, 教授 (50212080)
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研究分担者 |
杣本 智軌 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40403993)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コイ / 補体 / C3 / 細胞内活性化 / 断片化 / アイソタイプ |
研究実績の概要 |
コイ末梢血白血球の細胞内から検出された、補体C3に由来する断片ペプチドの同定と、補体成分アイソタイプとの関連性をタンパク質化学的な解析によって調べた。まず、細胞内のC3断片ペプチドを生成させるプロテアーゼファミリーを特定し、コイでは哺乳類とは異なり、カテプシンL以外のセリンプロテアーゼによる分解が起きていることが示唆された。分解断片は、細胞外で生じるC3断片とはまったくサイズが異なるが、C3α鎖のC末端から分子量約30000に相当することが、各種モノクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングで判明した。細胞内から検出されるC3断片のアイソタイプは、チオエステル結合の開裂・結合反応を触媒するHis残基を含む、いわゆるC3-Hisタイプであることが判明し、逆にNon-HisタイプのC3は細胞内では活性化されないことが示唆された。C3のノックダウン実験を、抗C3ポリクローナル抗体による特異的除去を利用して行ったところ、細胞外にC3が存在しない条件では、細胞内からもC3断片が検出されなかった。したがって、コイ白血球から検出されるC3断片は、細胞外で活性化・分解されたC3が細胞内に再取り込みされたものである可能性が考えられた。一方、白血球の種類による細胞内C3断片の分布についても検討したところ、哺乳類でC3断片の存在が報告されているリンパ球よりも、好中球、単球などの食細胞において、より明確に細胞内C3断片が検出された。細胞内C3断片の分布は、進化の過程で大きく変化したことが伺われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インビトロの実験では、白血球細胞内から検出されるC3断片の生成機構を、ほぼ解明することができた。哺乳類においても、C3が細胞内のプロテアーゼ(たとえばカテプシンLなど)で分解されるのか、細胞外で活性化されて生じたiC3b断片を特異的レセプターを介して再吸収しているのか、には議論があるところだが、本研究によって魚類では、細胞外からのC3断片の再取り込みというメカニズムが主な生成機構であることが判明したため、当初設定していた研究目的をおよそ達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響で、魚体を用いたインビボの実験に必要な試薬の調達が遅れたために、繰越申請をして承認された。次年度は、延期となっていたインビボでC3の断片化の影響調査を実施するために、魚体内でのC3の発現を阻害し、白血球機能に対する影響を精査する。
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