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2020 年度 実績報告書

補体C3の細胞内活性化による魚類T細胞の活性化制御と細胞性免疫応答の強化

研究課題

研究課題/領域番号 19H03050
研究機関九州大学

研究代表者

中尾 実樹  九州大学, 農学研究院, 教授 (50212080)

研究分担者 杣本 智軌  九州大学, 農学研究院, 准教授 (40403993)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードコイ / 補体 / C3 / 細胞内活性化 / 断片化 / アイソタイプ
研究実績の概要

コイ末梢血白血球の細胞内から検出された、補体C3に由来する断片ペプチドの同定と、補体成分アイソタイプとの関連性をタンパク質化学的な解析によって調べた。まず、細胞内のC3断片ペプチドを生成させるプロテアーゼファミリーを特定し、コイでは哺乳類とは異なり、カテプシンL以外のセリンプロテアーゼによる分解が起きていることが示唆された。分解断片は、細胞外で生じるC3断片とはまったくサイズが異なるが、C3α鎖のC末端から分子量約30000に相当することが、各種モノクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングで判明した。細胞内から検出されるC3断片のアイソタイプは、チオエステル結合の開裂・結合反応を触媒するHis残基を含む、いわゆるC3-Hisタイプであることが判明し、逆にNon-HisタイプのC3は細胞内では活性化されないことが示唆された。C3のノックダウン実験を、抗C3ポリクローナル抗体による特異的除去を利用して行ったところ、細胞外にC3が存在しない条件では、細胞内からもC3断片が検出されなかった。したがって、コイ白血球から検出されるC3断片は、細胞外で活性化・分解されたC3が細胞内に再取り込みされたものである可能性が考えられた。一方、白血球の種類による細胞内C3断片の分布についても検討したところ、哺乳類でC3断片の存在が報告されているリンパ球よりも、好中球、単球などの食細胞において、より明確に細胞内C3断片が検出された。細胞内C3断片の分布は、進化の過程で大きく変化したことが伺われた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

インビトロの実験では、白血球細胞内から検出されるC3断片の生成機構を、ほぼ解明することができた。哺乳類においても、C3が細胞内のプロテアーゼ(たとえばカテプシンLなど)で分解されるのか、細胞外で活性化されて生じたiC3b断片を特異的レセプターを介して再吸収しているのか、には議論があるところだが、本研究によって魚類では、細胞外からのC3断片の再取り込みというメカニズムが主な生成機構であることが判明したため、当初設定していた研究目的をおよそ達成することができた。

今後の研究の推進方策

コロナ禍の影響で、魚体を用いたインビボの実験に必要な試薬の調達が遅れたために、繰越申請をして承認された。次年度は、延期となっていたインビボでC3の断片化の影響調査を実施するために、魚体内でのC3の発現を阻害し、白血球機能に対する影響を精査する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Homeostatic functions of Tecrem, a CD46-like regulatory protein of complement activation, on epithelial cells in carp fish2021

    • 著者名/発表者名
      Prakash H, Motobe S, Nagasawa T, Somamoto T, Nakao M
    • 雑誌名

      Journal of Marine Science and Engineering

      巻: 9 ページ: 687

    • DOI

      10.3390/jmse9070687

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Local immune responses to two stages of Ichthiophthirius multifiliis in ginbuna crucian carp2021

    • 著者名/発表者名
      Shiota K, Sukeda M, Prakash H, Kondo M, Nakanishi T, Nagasawa T, Nakao M, Somamoto T
    • 雑誌名

      Fish & Shellfish Immunology

      巻: 118 ページ: 19-24

    • DOI

      10.1016/j.fsi.2021.08.013

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Lactobacillus paraplantarum L34b-2 derived from fermented food improves the growth, disease resistance and innate immunity in Pangasium bocourti2021

    • 著者名/発表者名
      Meidong R, Nakao M, Sakai K, Tongpim S
    • 雑誌名

      Aquaculture

      巻: 531 ページ: 735878

    • DOI

      10.1016/j.aquaculture.2020.735878

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Mixed culture of Bacillus aerius B81e and Lactiplantibacillus paraplantarum L34b-2 derived from in vivo screening using hybrid catfish exhibits high probiotic effects on Pangasius bocourti2021

    • 著者名/発表者名
      Meidong R, Buatong A, Nakao M, Sakai K, Tongpim S
    • 雑誌名

      Journal of Bioscience and Bioengineering

      巻: 132 ページ: 423-428

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2021.06.006

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Innate cell-mediated cytotoxicity of CD8+ T cells against the protozoan parasite Ichthyophthirius multifiliis in the ginbuna crucian carp, Carassius auratus langsdorfii2021

    • 著者名/発表者名
      Sukeda M, Shiota K, Kondo M, Nagasawa T, Nakao M, Somamoto T
    • 雑誌名

      Developmental and Comparative Immunology

      巻: 115 ページ: 103886

    • DOI

      10.1016/j.dci.2020.103886

    • 査読あり
  • [学会発表] コイ体表粘液中の補体成分と補体活性化2021

    • 著者名/発表者名
      吉迫郁子、長澤貴宏、杣本智軌、中尾実樹
    • 学会等名
      日本補体学会学術集会
  • [学会発表] コイ血清中におけるC3の二量体形成2021

    • 著者名/発表者名
      畠山紗矢香、長澤貴宏、杣本智軌、中尾実樹
    • 学会等名
      日本補体学会学術集会
  • [学会発表] ドチザメ血清中のザイモサン結合レクチンの同定と発現解析2021

    • 著者名/発表者名
      朱 珈凝、友井千帆里、長澤貴宏、杣本智軌、中尾実樹
    • 学会等名
      日本比較免疫学会学術集会

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公開日: 2022-12-28  

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