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2020 年度 実績報告書

フグの毒蓄積に関わる分子機構究明 - 毒選択性の視点から

研究課題

研究課題/領域番号 19H03051
研究機関長崎大学

研究代表者

荒川 修  長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (40232037)

研究分担者 山田 明徳  長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (40378774)
高谷 智裕  長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (90304972)
山口 健一  長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (90363473)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードテトロドトキシン / 麻痺性貝毒 / サキシトキシン / トリブチルスズ結合タンパク質 / マミズフグ / シマキンチャクフグ / Pao属
研究実績の概要

まず、淡水フグの毒選択性を明らかにするため、広塩性淡水フグであるマミズフグの無毒養殖個体を用い、in vitro組織切片培養法により各組織のテトロドトキシン(TTX)/麻痺性貝毒(PST)取り込み能について検討した。すなわち、同フグの肝臓、皮、腸から組織切片を作成し、TTXとPSTを等量含む培養液で20分-72時間培養後、各切片のTTX/PST含量を測定したところ、いずれの組織においてもPST含量の方が高く、培養時間が長いほどその差が大きくなる傾向がみられた。
一方、昨年度報告したカンボジア産淡水フグの遺伝子データにつき、再分析を行った。昨年度は、16S rRNA、COⅠ、CytB各遺伝子の部分配列に基づき、試料16個体をPao cochinchinensis、Pao abei、およびこれら2種の交雑個体の3群としたが、再分析した結果、Pao sp. AとPao sp. Bの2群に分けるのが妥当と判断した。Pao sp. AとPao sp. BではPST蓄積能が異なり、かつ核ゲノムのトリブチルスズ結合タンパク質(TBT-bp2)遺伝子の配列がアミノ酸レベルで異なることから、淡水フグのPST蓄積にTBT-bp2が関与する可能性のあることが示唆された。
他方、海産フグで毒成分が不明なシマキンチャクフグを対象に、毒組成と毒の体内分布を調査した。奄美大島産の10個体につき、筋肉、肝臓、腸、胆嚢、生殖腺、皮の毒成分を分析したところ、皮と卵巣から、TTXとネオサキシトキシン(neoSTX)を主成分とするPSTが大量に検出された。他の組織も微量ながら両毒を含んでいた。TTXとPSTの比率は組織によって異なったが、総じてTTXが主成分で、総毒量の8割程度を占めた。本種は、モヨウフグ属の海産フグ同様、TTXとPSTを同時に保有するフグであることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

海産フグの肝臓組織を対象にNagashima ら(2003)が開発したin vitro組織切片培養法を広塩性淡水フグの各組織に適用することにより、in vivoでみられたTTX/PSTの取り込み・蓄積の選択性が組織レベルでも認められることが示された。今後は、このex vivo毒投与の手法を用いて、当該選択性が吸収・輸送・蓄積のどの段階により強く依存しているのか、そこにどのようなメカニズムが関与しているのかを究明していくことが可能と考えられる。
一方、カンボジア産淡水フグの遺伝子データを見直すことで、淡水フグの分類が非常に混乱していることや、淡水フグの種によるPST蓄積能の相違にTBT-bpが関与する可能性があることを再確認できた。昨年度も記載したように、TBT-bpは、海産有毒フグが保有するTTX/PST結合性タンパク質アイソフォーム(Tr)群の進化的起源と推定されており、淡水フグの選択的なPST取り込み・蓄積に関わる有力な候補分子と考えられる。
他方、今回、Trの膜受容体・TTXトランスポーターの探索は、準備が不十分で行えなかったが、キタマクラ属の海産フグであるシマキンチャクフグの毒成分を初めて明らかにすることができた。キタマクラ属のフグは、モヨウフグ属同様、TTXとPSTを同時に保有しうると考えられるが、TTXとPSTの比率という観点でみると、モヨウフグ属がPao属の淡水フグに近いのに対し、キタマクラ属はトラフグ属海産フグに近いように思われる。今後、これらのフグや他の多様なフグ種について、Tr群やTBT-bpの有無ないし発現状況とTTX/PST分布プロファイルを照らし合わせて解析することで、フグの毒吸収・輸送・蓄積に関わる分子機構の全容がみえてくる可能性がある。
以上から、本研究課題の進捗状況については、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

昨年度に引き続き、海産/淡水フグの無毒養殖個体から各組織の組織切片を作成し、TTX/PSTの取り込み実験を行うとともに、トラフグを用いてTrの膜受容体・TTXトランスポーターの探索を試みる。一方、今年度の研究により、淡水フグのPST蓄積にTBT-bpが関与することが再確認され、主にTTXを保有するトラフグ属の海産フグはTr群を介してTTXを、PSTを保有するPao属等の淡水フグはTBT-bpを介してPSTを選択的に蓄積するものと推察された。さらに、キタマクラ属のシマキンチャクフグは、モヨウフグ属のフグ同様、TTXとPSTを同時に保有することが示された。これらのフグや他の多様なフグ種について、遺伝子解析と毒性分析を行い、Tr群とTBT-bpの有無ないし発現プロファイルと毒性の関係について検討する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)

  • [国際共同研究] University of Kratie(カンボジア)

    • 国名
      カンボジア
    • 外国機関名
      University of Kratie
  • [国際共同研究] Gyeongsang National University(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Gyeongsang National University
  • [雑誌論文] Co-Occurrence of Tetrodotoxin and Saxitoxins and Their Intra-Body Distribution in the Pufferfish Canthigaster valentini2020

    • 著者名/発表者名
      Zhu Hongchen、Sonoyama Takayuki、Yamada Misako、Gao Wei、Tatsuno Ryohei、Takatani Tomohiro、Arakawa Osamu
    • 雑誌名

      Toxins

      巻: 12 ページ: 436~436

    • DOI

      10.3390/toxins12070436

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Phylogeny and Toxin Profile of Freshwater Pufferfish (Genus Pao) Collected from 2 Different Regions in Cambodia2020

    • 著者名/発表者名
      Zhu Hongchen、Yamada Akinori、Goto Yui、Horn Linan、Ngy Laymithuna、Wada Minoru、Doi Hiroyuki、Lee Jong Soo、Takatani Tomohiro、Arakawa Osamu
    • 雑誌名

      Toxins

      巻: 12 ページ: 689~689

    • DOI

      10.3390/toxins12110689

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2022-12-28  

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