研究課題/領域番号 |
19H03052
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
北野 健 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (40336219)
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研究分担者 |
中村 將 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 参与 (10101734)
稲葉 博之 愛知県水産試験場, 内水面漁業研究所, 技師 (60790293)
野津 了 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 主任研究員 (70774397)
井尻 成保 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (90425421)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コルチゾル / 環境依存的性決定 / メダカ / ウナギ / ミツボシキュウセン |
研究実績の概要 |
我々は、メダカ孵化仔魚のXX個体の生殖腺を用いてRNA-seq解析を実施したところ、高温やコルチゾル処理により脳型アロマターゼ(cyp19b)の遺伝子発現が抑制されることを見出した。そこで、ゲノム編集技術を利用してcyp19aとcyp19bの機能欠損(KO)メダカを作製してその表現型を解析した。これらダブルKOメダカの2カ月齢と6カ月齢における生殖腺の組織学的観察を行ったところ、ダブルKOメダカ のXX個体では、2カ月齢で卵精巣、6カ月齢で精巣が観察されたことから、これら遺伝子は卵巣の発達や維持に重要な役割を果たしていると考えられた。 次に、コルチゾルがハタ科魚類の生殖腺に及ぼす影響を調べるため、ヤイトハタを用いてコルチゾルの経口投与実験を実施した。1群10尾とし、コルチゾル(低、中、高濃度)処理群、対照群を設定し、6週間処理した。終了時に低濃度群は8尾生存したが、中濃度群は全個体が死亡し、高濃度群は1尾のみ生存した。組織学的観察の結果、処理群の生殖腺は対照群の卵巣と相違なく、ハタ科魚卵巣においてコルチゾル投与の影響は認められなかった。 さらに、養殖ウナギの雄化とコルチゾルとの関係を調べるため、コルチゾル合成阻害剤(メチラポン)を用いた飼育試験を実施した。メチラポンを混合した餌をシラスウナギに与え、全長30cm以上まで飼育し、雌雄判別を行ったが雌の個体は出現しなかった。また、コルチゾル拮抗剤(RU486)を混合した餌をシラスウナギに給餌し、同様の飼育試験を行ったが、雌の個体は出現しなかった。一方、1尾ずつを屋外のタンクで飼育する単独飼育を試みた。シラスウナギを全長15cm程度まで集団で飼育した後、単独飼育を半年間行った結果、おおよそ半数の個体が雌へと分化した。このように、単独飼育環境下で雌雄が等しく現れることから、ニホンウナギには遺伝的性決定が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに研究が進展したため。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、メダカ孵化仔魚の生殖腺を用いてRNA-seq解析を実施し、高温やコルチゾル処理により発現上昇する遺伝子をすでに単離している。そこで、これら機能欠損(KO)メダカ系統を作製して表現型を解析する。また、性転換魚であるミツボシキュウセンやハタ科魚類にコルチゾル合成阻害剤等を投与して、性比やコルチゾル量等を調査することにより、性転換とコルチゾルとの関連性を明らかにする。さらに、単独飼育したウナギにおける性比やコルチゾル量等を定期的に調べるのと同時に、高密度飼育したウナギに高濃度のコルチゾル合成阻害剤等を投与して性比やコルチゾル量等を調査し、養殖ウナギの雄化とコルチゾルとの関連性を明らかにする。
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