研究課題
熱帯・亜熱帯の浅海域に生息する魚類の多くは月周性の産卵周期を持ち、月一回の産卵を種ごとに決まった月相で繰り返す。月から得られる周期的な環境情報を約一ヵ月周期の内因性の情報に伝達する機構については不明な点が多い。本研究では、松果体と間脳域(視交叉上核)に着目し、ハタ科魚類の概日時計を司る主時計の局在と概月性を司るタイマー型砂時計の実体の解明を目的とした。研究初年度である当該年度において以下の結果を得た。(1)クローニングしたヤイトハタのPer2遺伝子を分子系統解析で調べた結果、単離された遺伝子は脊椎動物のPer2と同定された。(2)In situ hybridizationによってヤイトハタ脳の視蓋と小脳を含む切片を染色した結果、アンチセンスプローブでのみシグナルが確認された。(3)沖縄県栽培漁業センターで自然産卵によって得られたヤイトハタ受精卵を琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設において飼育し、受精後60時間から186時間(08:30、14:30、20:30)でサンプリングを行った。Whole mount in situ hybridizationによって仔稚魚の脳におけるPer2遺伝子の発現局在の確認および発現定量を行った結果、松果体において受精後90時間から明期に高く、暗期に低い周期的な発現が確認された。また同遺伝子は視交叉上核では受精後96時間から、手綱核では受精後114時間から、そして嗅球では受精後96時間から発現が確認されたが明期と暗期における発現に変化が見られなかった。このことから本種の概日時計は松果体から機能し始める可能性があった。
2: おおむね順調に進展している
当初計画では概日リズムを司る時計遺伝子のクローニングとマスタークロックの部位特定から開始することにしていた。当該年度内に当初目的をほぼ達成したことから、本研究は計画通り進んでいると判断する。
概日時計の主たる構成遺伝子であるCryptochromeにも焦点を当てることを計画していた。今後はこの遺伝子も対象として研究を進める。また、二年目からは本研究の中心課題となる概月時計の発振機構を解明する研究に取りかかる。
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General and Comparative Endocrinology
巻: 280 ページ: 9-14
10.1016/j.ygcen.2019.03.019