研究課題/領域番号 |
19H03054
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
末武 弘章 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (00334326)
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研究分担者 |
瀧澤 文雄 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (60822913)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ワクチン / 魚類 / 抗原 / 免疫記憶 |
研究実績の概要 |
メダカは、IgTを欠き、IgMのみを主要な抗体として用いるシンプルな液性免疫機構を持つため、魚類の主要な抗体であるIgMおよびIgM+B細胞の機能を解析するために最適なモデルである。そこで、これらの解析を可能にするために、メダカIgMに対する抗体の作製に取り組んだ。クローニングしたメダカIgM遺伝子からリコンビナントタンパク質を作製するにあたり、Cμ1領域はIgDにも同様の構造が存在している一方、Cμ2領域はIgMの膜型および分泌型の両方に存在することからCμ2領域を抗原として用いた。作製した発現ベクターを哺乳類細胞に導入し、リコンビナントタンパク質を作製した。導入した哺乳類細胞によるIgMの発現を確認し、ラットを免疫した。免疫した動物からリンパ節を回収し、リンパ節白血球とミエローマ細胞を融合させ、メダカIgM抗原である組み換えタンパク質への反応を確認した。 魚類の抗原保持の場であるメラノマクロファージを構成する褐色あるいは黒色の細胞はメラノマクロファージ(MM)と呼ばれているが、この性状は哺乳類の赤脾髄マクロファージ(RPM)と類似している。そこで、哺乳類RPMの分化に必須である転写因子Spi-Cのノックアウトゼブラフィッシュを作出したが、MMはリンパ組織である脾臓でも腎臓でも認められた。このことから、MMとRPMは傷ついた赤血球の貪食と鉄の再利用などの機能面では相同であるが、 分化様式が異なる細胞である可能性が示され、MMはSpi-C非依存的な分化機構を持つことが示唆された。 RT-PCRで脾臓に特異的に発現することを確認している補体受容体様遺伝子の発現をin situ hybridizationで発現を確認中である。 次年度予定していた抗原投与初期における脾臓のエリプソイドにおける抗原捕捉を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画した実験は概ね順調に進んでいるが、年度末に計画していた遺伝子発現解析実験がコロナウイルス感染対策などで十分には進めることができなかった。一方で次年度以降予定していた抗原捕捉実験を前倒しで実行できた。
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今後の研究の推進方策 |
メダカの抗体については、ほぼ完成に近づいている。また、今後はメダカIgMの部分タンパク質を抗原とした抗血清を作製し、ELISA法や抗体産生細胞の同定の準備を進める。 哺乳類では1つしかないSpi-Cが魚類では複数あることが見えてきたことから、魚類においては分子間の機能分化が起こっている可能性も考えられることから、ノックアウト魚における補償を検討するとともに、次候補の遺伝子のノックアウトに着手する。 また、抗原捕捉の最初の場であるエリプソイドに存在する抗原捕捉細胞の同定とその役割、その形成機構についての解明を進める。
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