組み換えゼブラフィッシュIgMに対するモノクローナル抗体を作出した。本抗体はゼブラフィッシュのIgMに特異的に反応することが明らかになり、IgM陽性細胞の単離にも成功した。 脾臓エリプソイドの抗原捕捉細胞は特異的にマクロファージマーカー遺伝子を発現していることが明らかになり、マクロファージの1種であることが強く示唆された。哺乳類のマージナルゾーンマクロファージ(MZM)分化因子のオーソログについてゲノム編集をゼブラフィッシュに施したところ、哺乳類とは異なり、変異魚と野生魚間での抗原捕捉に差は見られなかったが、抗原捕捉分子の発現量の有意な低下が認められた。このことは、MZM分化因子は、魚類では抗原捕捉細胞の分化には関与しないが、抗原取り込み分子の発現を制御していることを示唆する。さらに、リンパ球を欠くRAG1変異ゼブラフィッシュでは野生型と比較してエリプソイドにおける抗原取り込み量の減少が認められた。一方で、抗原取り込み分子の発現量には有意な差は認められなかった。このことは、脾臓中のマクロファージ数は減少しないが、エリプソイドへの局在性が失われることが推測された。哺乳類ではマージナルゾーンの形成にはB細胞が必要であることが知られているため、同様の機構が魚類エリプソイドにも存在することが示唆された。 メラノマクロファージ(MM)は抗原提示に関わるMHCクラスIIの発現とT細胞を誘引するケモカインの発現が顕著であったことから、MMセンター(MMC)がT細胞依存的な獲得免疫応答の場であり、免疫記憶形成に関わることが示唆された。一方でゲノム編集によるMMC欠損は通常状態では確認できなかった。 このように、魚類では抗原捕捉機構が分子・細胞レベルで異なるが、魚類の免疫記憶形成は魚類独自の構造であり、抗原の長期保持に関わるMMCにおいて行われることが推測された。
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