研究課題/領域番号 |
19H03062
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
八木 洋憲 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (80360387)
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研究分担者 |
井上 憲一 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (60391398)
田中 勝也 滋賀大学, 環境総合研究センター, 教授 (20397938)
藤井 吉隆 愛知大学, 地域政策学部, 教授 (10463225)
田口 光弘 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 主任研究員 (90391424)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 農業経営 / ステークホルダー / 持続可能性 |
研究実績の概要 |
農業経営のSH(ステークホルダー)との関係性や経営によるSHマネジメント(SHM)と経営成果との関係のメカニズムについて,既往研究をもとに分析モデルを検討した。SHMは,SH関係との識別が難しく,両者の混同は分析における内生性の問題に繋がる。定量分析においては,経営戦略論の一般的なモデルである資源ベース理論にもとづき,外部環境と経営資源が経営成果(持続性)に影響すると想定し,SHMをこれらの媒介変数として扱うこととした。 具体的なSHMについて,人的資源管理面からは,①福井県内の集落営農の従業員アンケート調査結果から,家族や地域といった SH関係に関わる職務満足が高いことが示された。②島根県内の集落営農へのアンケート調査から,後継者世代には仲間と呼べる存在が数人いるケースが多い一方で,意思決定権限は強くないことが分かった。③比較対象として,パート従業員を多数雇用する施設園芸経営へのヒアリングおよび従業員アンケート調査から,従業員満足度を改善するための組織づくりや人的資源管理のポイントを抽出した。 地域との関係性について,①滋賀県内の大規模水田経営へのヒアリング調査から,土地持ち非農家の増加による集落機能の低下が進んでいること,同じ地域でも集落機能に差異が認められること,農地の選別など農地集積意向に変化が見られることなどが明らかとなった。②上述の島根県内でのアンケート調査から,集落営農は地域貢献を理念とするケースが多い一方で,それが地域内に浸透しているとは限らないことが示唆された。 農業経営の政策対応として,空間計量モデルから,環境支払の採択行動には正の空間自己相関が存在すること,決定要因は取組内容により異なること,ソーシャルキャピタルの役割が大きいことなどが示された。また,滋賀県内の集落へのアンケート調査結果から,全体として結果支払いを支持する傾向にあることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクトの進捗状況はおおむね良好である。複数地域において,SHマネジメントに関わるヒアリング調査及びアンケート調査がそれぞれ実施されおり,全体アンケートに向けた準備が進められている。また,調査結果の分析のための理論的整理,分析モデルの構築も進められている。これらについて関連する成果が公表ないし公表準備が進められている。 ただし,本年度2月以降,新型コロナウイルス感染症の拡大にともなって,対象地域でのヒアリングやアンケート調査設営のための打合せが困難になっており,さらに,調査対象者や協力機関も対応に追われているため,調査の実施地域,時期,方法について,具体的な計画・調整を行うことが著しく困難になっている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,経営者および関係するSHへのヒアリング調査により,具体的なSHマネジメントおよびその効果について,実態をもとに明らかにする。とくに,水田経営におけるSHマネジメントの視点から組織形態や事業連携の特徴,人的資源管理の特徴を類型化し,経営戦略や経営成果への影響を検討する。また,水田経営従業員を対象として,地域へのコミットメントに関する調査結果の分析を行うとともに,職場満足度に関するアンケート調査を実施する。 また,関係機関との綿密な調整を経て,土地利用型経営へのアンケート調査を配布する。対象地域として,これまで関係構築をすすめている地域を対象とし,大規模経営を対象として配布する。さらに,SH(地権者,集落,従業員)に対して,各経営を通じたアンケート調査の設計・配布を行う。ただし,新型コロナウイルス感染症の収束状況により,実施地域,時期,方法については引き続き検討する。
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