研究課題/領域番号 |
19H03079
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 寿浩 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (80262111)
|
研究分担者 |
新井 鐘蔵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 主席研究員 (20414732)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | リモートセンシング / コンピュータネットワーク・ICT / 精密畜産 |
研究実績の概要 |
低消費電力で駆動されるマイクロバルブを備えた開閉型液絡と、超長寿命Ag/AgCl電極とを開発するとともに、それらを集積した間欠動作参照電極を開発した。また牛ルーメン液を用いて、試作した間欠動作参照電極の基本動作検証を行った。 マイクロバルブを備えた開閉型液絡の開発では、内径0.5 mmのシリコーンチューブ液絡の開閉が可能な形状記憶合金(SMA)を用いたバルブを開発した。バルブは、ノーマリークローズ型で、非動作時にはシリコーンチューブ液絡はSMA超弾性ワイヤによって押圧されており,動作時に通電によりSMAアクチュエータワイヤが超弾性ワイヤを引張することで液絡が開く構造とした。これにより、応答時間0.1秒以下、pH値換算誤差0.1以下の液絡バルブを実現した。また、このSMAアクチュエータの駆動電力の低消費電力化のため、パルス駆動制御を導入し、30 mW程度での駆動を可能とした。 超長寿命Ag/AgCl電極の開発では、水素圧援用バルブ液絡型参照電極構造を提案・試作した。この構造では、KCL参照液(電解液)タンクに、Ag/AgCl電極とともにPt電極が浸漬されており、電極間に電圧を印加すると、Ag/AgCl電極上ではAgClの析出し、Pt電極上では水素が発生する。一定期間ごとに電圧を印加することにより、溶出消耗したAgClを補えるため、長期安定動作するAg/AgCl電極を実現できる。また、発生水素による圧力で液絡中の気泡を除去できる液絡クリーニング効果を実証することができた。 これらを用いて、13.5 x 7 x 19.5 mm3の間欠動作参照電極を試作し、フィステル形成牛より採取したルーメン液で動作を検証した結果、市販pHセンサによる計測値との差が0.1以下の安定したpH計測が行えることを確認することできた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、低消費電力で駆動されるマイクロバルブを備えた開閉型液絡と、超長寿命Ag/AgCl電極とを開発するとともに、それらを集積した間欠動作参照電極を開発でき、ルーメン液での基本動作検証を行えている。次年度は、この参照電極を使って、無線ルーメンpHセンサ端末の試作、およびフィステル形成牛での連続測定実験を行うことになっているが、その準備は十分に整えることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
開発したマイクロバルブを備えた開閉型液絡と長寿命Ag/AgCl電極とを集積した間欠動作参照電極を用いてpHセンサを構成するとともに、専用の無線モジュールを開発して、無線ルーメンpHセンサ端末を試作する。まず、開発した間欠動作参照電極と、ISFET(Ion Sensitive FET)あるいは小型ガラス電極を生体適合性3Dプリントケースの中に配線・実装を行って、pHセンサを構成し、フィステル形成牛を用いて、pHセンサとしての性能評価を行う。また、pHセンサからの信号を信号強度に対応したアンプと無線通信チップからなる無線モジュールを設計、試作する。そして、フィステル形成牛を用いてルーメン内との無線通信性能について評価を行う。 本年度末には、経口投与が可能なサイズ(直径20 mm x 長さ70 mm以下)の無線ルーメンpHセンサ端末を試作して、フィステル形成牛を用いた1ヶ月以上の連続測定実験を実施する。なお、新型コロナウイルス感染症の影響で5月末時点で研究室が閉鎖状態にあり、試作などの実験ができていないため、全体的に計画の遅れが発生し、フィステル形成牛の連続実験が来年度になる可能性がある。
|