本研究では、植物の表現型解析(フェノタイピング)において、植物の機能形質の評価を可能にする、群落を対象とした画像解析手法を開発することを目的とし、安価な計測・撮影機器を利用して、植物の機能形質に関する大量な情報を高速に取得することで、育種分野や栽培管理において有用となる手法の開発をめざす。 2022年度は、まず、これまでに確立したPS2量子収率の群落表面マッピング手法と群落表面光強度分布画像計測手法を組み合わせ、PS2量子収率画像と葉面PPFD画像を画像間演算により乗じることで光合成電子伝達速度ETRを群落表面(イチゴ数個体)にマッピングする手法を開発した。さらに、この手法の有効性の評価を目的に、実測したETRとの比較を行い、概ね、適当なETRをマッピングできることを確認した。 さらに、これまでに開発した光化学分光反射指数PRIの簡便な画像化法の精度向上に向け実験を重ね、光学フィルタの特性(入射角依存性)に基づき起こる誤差を明らかにし、その対処法を考案すると同時に、温室で栽培されているイチゴ群落に対して自然光下において、PRIの変化量、PSII量子収率、葉面PPFDの関係を調べ、開発したPRI画像計測システムにより、広範なPSII量子収率分布を推定できる可能性を示した。 さらに、植物ファンクショナルイメージングにおいて必要となる画像中の植物葉部分の抽出に関しては、ディープラーニング(DeepLab)によるセグメンテーション法の実用性を確認した。
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