研究課題/領域番号 |
19H03082
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井上 英二 九州大学, 農学研究院, 教授 (00184739)
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研究分担者 |
松井 正実 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10603425)
光岡 宗司 琉球大学, 農学部, 准教授 (60437770)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トラクタの力学モデル / 転倒・転落事故 / 3次元路面再構成 / ジンバルシステム / 拡張カルマンフィルタ |
研究実績の概要 |
昨年度、トラクタの前面に設置したステレオカメラから路面の3次元情報の再構築を行った結果、起伏走行路面を走行するトラクタの車載カメラ画像の計測精度には、カメラの取付角、機体振動、起伏乗越え時の重心移動が大きく影響することが確認された。本年度はこれらの影響因子を取り除くため、供試ステレオビジョンカメラに搭載可能なピッチ、ロール軸を制御する2軸型ジンバルを自作し、車載時の動的環境下においてもカメラの姿勢を一定に保つジンバルシステムを開発した。カメラ画像の計測精度を検討した結果、本装置を組み込んだ本システムは、常に一定の取付角度で路面情報を安定的に計測でき、計測精度の向上を実験的に明らかにした。 次に、再構成された路面の起伏情報をトラクタの3次元力学モデルの入力値として機体のロール挙動を解析し、実走行時の計測値と比較を行った結果、カメラのトラクタ本体への取り付け角が走行路面に対して90度に近いほど路面の再構成精度は向上し、実測値とのRMSEは他の取り付け角度(10度、20度)に比べて最小であった。しかし、取付角90度でのトラクタ本体へのカメラの設置は現実的ではなく、トラクタ前方の走行路面情報を取得するには10度~20度の前傾角が必要となる。そこで、路面の再構成精度が比較的低い10度、20度のカメラ設置条件で挙動予測精度の向上を図るため、機体挙動の予測結果と、ジンバル内蔵の慣性センサからの情報を観測値として拡張カルマンフィルタによるフィルタリングの適応を図った。その結果、路面の再構成精度が低いステレオビジョンカメラの取り付け角条件下においても取り付け角90度における再構成路面情報に基づく機体のローリング挙動のシミュレーション結果と同等の予測精度を得えた。しかし、特定の走行速度帯域においては予測精度が低下すること、転倒リスクが高い傾斜路面を想定した解析モデルの拡張が課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で特に年度前半は研究活動の著しい制限を受けたが、解析を中心にジンバルシステム導入によるステレオカメラからの3次元路面再構成精度の向上、拡張カルマンフィルタによる路面の再構成精度が低いステレオビジョンカメラの取り付け角条件下においても取り付け角90度における再構成路面情報に基づく機体のローリング挙動のシミュレーション結果と同等の予測精度を得えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初研究計画に沿っておおむね順調に推移しており、来年度についても計画通り推進する。次年度では、特定の走行速度帯域においては予測精度が低下する原因の究明と転倒リスクが高い傾斜路面を想定した解析モデルの拡張を図る。 特に傾斜路面の走行時に起伏の乗り越しや脱輪に伴う横転倒であることから、これらの現象の定量的な評価のためには、走行路面の傾斜角度や障害物および脱輪の形状などを詳細に変更しながら解析を行う必要がある。そこで、次年度では乗用トラクタの転倒・転落のメカニズムを明らかにするため、マルチボディダイナミクスによる乗用トラクタの転倒解析および転倒危険度の評価指標を検討するとともに、本解析手法と車輪および作業機等の制御を組み合わせ転倒防止システムの開発を目指す。
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