研究課題/領域番号 |
19H03085
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
櫻井 玄 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主任研究員 (70452737)
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研究分担者 |
坂本 利弘 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (20354053)
石塚 直樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (20414500)
小野 圭介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (20549555)
宮田 明 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 研究領域長 (60354114)
Sprague David 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 再雇用職員 (90282285)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 衛星データ / PLANET / イネ / 収量 / バイオマス / フラックス / 機械学習 / データ同化 |
研究実績の概要 |
本研究では、衛生情報を組み合わせて作物のバイオマスを推定する新手法を開発することを目的とする。特に、近年進化が著しい小型高解像度衛星データに対して、作物のプロセスベースモデル、データ同化手法、機械学習を組み合わせ、日本の狭小地圃場における作物バイオマスをより精密に予測する手法を開発する。 令和元年度は、対象圃場である茨城県つくば市と新潟県長岡市の水田についてPLANETの画像を2017年と2018年について入手し、葉面積指数(NDVI)を推定した。Plantの画像は日本の狭小圃場にも十分適用できる解像度を持つことを確認することができ、また、雲がない栽培期間のデータのみを抽出しても10~20シーンの画像を得ることができたため、時間解像度においても空間解像度においてもプロセベースモデルをデータ同化することができるデータを得ることができた。また、つくば市の真瀬水田における二酸化炭素のフラックスやイネのバイオマスの測定値を2018年度分まで得た。さらに、モデルとしてHasegawa Modelを入手し、日本域における計算を可能な形に実装化した。さらに今年度は、先立って機械学習による作物収量の予測の検討に着手した。具体的には、日本の全域に対する作物収量の予測に、機械学習手法の一つである勾配ブースティング法を当てはめ、統計的手法の重回帰分析や一般化加法モデルの結果と比較した。勾配ブースティング法は日本全国の収量予測に対して相関係数0.9以上の精度を実現し、従来統計的手法よりも高い精度を実現した。勾配ブースティング手法は、モデルの誤差を繰り返し精緻化する手法であり、データ数が少ない収量データについては従来の予定にあったディープラーニングの手法よりも、勾配ブースティングを今後適用する可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の申請書では、令和元年度はPLANETデータの入手と作物生育モデルの整備、水田データの入手とともに、実際にデータ同化手法を適用し、その有効性を確認することを目的としていた。しかしながら、本研究の研究代表者が、オーストラリアの南オーストラリア大学に令和学年度後半からVisiting Researcherとして滞在し、機械学習手法の習得と共同研究を行うことになった。そのため、本来令和2年度に行うことになっていた機械学習手法の導入の検討は前倒しして、令和元年度に行い、データ同化手法の実装と機械学習との融合は令和2年度に行うこととした。機械学習の導入が本研究グループとしてもっとも時間がかかる過程であると予定していたが、南オーストラリア大学の協力により迅速にすすめることができた。一方で、令和元年度に予定していたプロセスベースのデータ同化は、本研究者が既に専門とする分野であり、特に障害なくシミュレーション実験を行うことができると考えている。したがって、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
作物生育のプロセスベースモデルを真瀬水田でシミュレーションし、既に入手しているPLANETの衛星データを用いてデータ同化を行う。その結果、時間解像度として、データ同化のためにどの程度のシーンが必要かどうかを解析する。実用的な手法の提案のために、データを省略していき、最終的にはどの程度の頻度のPLANET画像だけで、かつ、どの程度の時間間隔の撮影で十分な精度のデータ同化ができるのかを検証する。 また、誤差時系列に勾配ブースティングやディープ・ラーニングなどの機械学習を適用する。まず、データ同化手法によって推定精度を上げた予測値とフラックス観測値・衛星LAI観測値を比較し、その誤差をデータ化する。誤差時系列に対して、ディープ・ラーニングを適用し、誤差構造を学習させる。プロセスベースモデルと観測データの誤差は、ある特定の気温帯や降水量帯におけるモデルのバイアス、台風、害虫などモデルに考慮されていない要因が誤差を生み出していると考えられる。どの程度誤差を学習されることができるのか、データをフルに使い、学習期間・学習データの綿密な選定を行う。
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