研究課題/領域番号 |
19H03088
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大槻 恭一 九州大学, 農学研究院, 教授 (80183763)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人工林 / 雨水配分 / 樹幹流 / 樹冠通過雨 / 災害 |
研究実績の概要 |
中国黄土高原の半乾燥地のニセアカシア人工林における樹冠通過雨量47.5%除去乾燥実験結果を解析し、乾燥区の平均樹液流速密度は対象区の9.1~45.3%であり、半乾燥地のニセアカシアは乾燥の影響を受けて成長が阻害され、蒸散量も減少することを明らかにした。 人工林に浸入し拡大を続けて人工林荒廃の元凶となっているモウソウチク林における45%本数間伐実験結果を解析し、①竹林は間伐翌年にはほぼ再生すること、②新生竹の樹液流速密度は60%程度増加すること、③間伐後の林分蒸散量は間伐前と比較して初年度90%、2年度78%で、竹林の間伐による蒸散量抑制は難しいことを明らかにした。 日本各地において観測されたヒノキ人工林の樹液流速密度および林分蒸散量の観測結果を総合的に解析し、ヒノキ人工林の林分蒸散量は、立木密度と胸高直径を用いれば、日射量および飽差の関数として推定可能であり、この手法を適用すれば、森林管理に伴って水資源損失としての林分蒸散量がどのように変化するかを推定できることを明らかにした。 未間伐および伐採後のスギおよびヒノキ人工林の林床土壌の撥水性を比較し、ヒノキ人工林はスギ人工林と比較して林床土壌の撥水性が高いことを明らかにした。 高密度非管理ヒノキ人工林(2500本/ha)における雨水配分観測結果と、日本におけるヒノキ人工林の雨水配分研究報告成果を比較検討し、①雨水配分は立木密度の影響を最も強く受けること、②高密度非管理ヒノキ人工林では樹幹流率が20%を超え、林床への影響が無視できないこと、③高密度非管理ヒノキ人工林では、枯れ枝が樹冠通過雨量に影響を及ぼす可能性があることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年8月から高密度非管理ヒノキ人工林(2500本/ha)に10m×10mを3プロット設置し、そのうち1プロットを樹幹流100%除去・樹冠通過雨量50%除去の乾燥区として、土壌水分量および樹液流速密度の変化を観測したが、初年度は乾燥区・対象区で大差はなく、さらに観測を継続し、降雨条件によるヒノキ人工林の乾燥区における土壌水分および樹液流速密度の必要性が示唆された。 2019年度に超高密度非管理ヒノキ人工林(3000本/ha以上)に観測プロットを設置する予定であったが、設置予定時期の雨が激しく設置できず、さらにコロナ感染拡大による行動自粛のため、遠隔の急傾斜山地に観測プロットを設置できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
高密度非管理ヒノキ人工林(2500本/ha)における乾燥区・対象区における土壌水分および樹液流速密度の観測を継続する。 2020年度に、勤務地近隣(2.5km)の超高密度非管理ヒノキ人工林を探し出し、観測プロットを2プロットを設置し、従来ほとんど観測例のない超高密度非管理ヒノキ人工林における雨水配分と林床環境観測を開始する。
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