研究課題/領域番号 |
19H03094
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
中村 彰彦 静岡大学, 農学部, 准教授 (20752968)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | キチナーゼ / 1分子計測 / 動力学解析 |
研究実績の概要 |
海洋性バクテリアVibrio parahaemolyticus由来キチナーゼ1 (VpChi1)は陸上バクテリア由来のキチナーゼと比較すると、C末端側にもう一つのキチン吸着ドメインが存在している。昨年度までの研究でこのドメインを削除するとキチン低濃度での分解活性が大幅に低下することから、VpChi1にとってキチン親和性を向上させるために重要なドメインであることが分かっている。また全長酵素と第2吸着ドメイン削除酵素でキチンへの吸着を1分子蛍光計測で比較したところ、第2吸着ドメインがあることでキチン疎水面への吸着親和性が上がっていることが明らかとなっている。 そこでのC末端側第2吸着ドメインの性質を明らかとするため、その発現系を作成した。更にN末端側にフリーシステイン残基を導入し、蛍光色素で位置特異的標識を行った。吸着速度定数と解離速度定数の解析は現在継続している。加えて第2吸着ドメインの結晶構造を明らかとするため、結晶化を行っている。また全長酵素と第2吸着ドメインを削除した変異体について高速原子間力顕微鏡を用いて運動速度と運動距離の比較を行った。その結果、全長酵素では51.5 nm/sの運動速度で38.4 nmの運動距離をしめし、削除変異体では48.9nm/sの運動速度でと30.3 nmの運動距離であった。すなわち第2吸着ドメインの有無で運動機能には大きな差は無いことが明らかとなった。これにより第2吸着ドメインによりキチン結晶の疎水面への親和性及び特異性が向上したことにより分解活性が向上していることがより明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り海洋性バクテリアVibrio parahaemolyticus由来キチナーゼ1 (VpChi1)の活性と吸着特性の関係を明らかにできている。また特徴的な第2吸着ドメインの吸脱着特性の解析も行えており、論文としてまとめるための結果が揃ってきているため。
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今後の研究の推進方策 |
人工海水中でのVpChi1全長及びC末端CBM領域の吸脱着特性の解析を行い、吸着現象に対する塩濃度の影響を検証する。また人工海水中でVpChi1全長の生化学活性の解析を行い、酵素活性に対する塩濃度の影響も確認する。またC末端CBM領域のX線結晶構造を明らかにし、論文執筆に必要な結果を整える。
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