研究課題/領域番号 |
19H03097
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
須藤 重人 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター気候変動対応研究領域, 上級研究員 (40354071)
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研究分担者 |
山本 昭範 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20733083)
竹本 稔 神奈川県農業技術センター, 生産環境部, 主任研究員 (80502096)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 温室効果ガス削減 / 一酸化二窒素 / 肥効 / 有機質肥料 / ペレット / バイオ炭 |
研究実績の概要 |
R2年度は、ペレット堆肥を構成する主たる資材の混合比を検討し、肥効とN2Oの最適化に向けた栽培試験を試行する計画としていた。研究進捗状況:上記の手法で作成した試作品において、N2Oの排出量の大小を比較するため、ポットレベル栽培試験および、畑圃場レベル栽培試験を実施した。ガス、無機態窒素、気象要素等の観測結果が整い次第、そのN2O制御要因を解析することで、現実的な施肥体系を考慮した資材開発の基礎作りを進める。現在は、ガス試料の濃度分析を継続中である。 研究方法:粒状ペレットの造粒に適した豚糞を基本資材として着手した。リン、カリに比して不足する窒素については、硫安等の添加で補い、ひまし油などの添加で造粒効果を増したうえでバイオ炭を添加して窒素分の分散化をはかるのが基本的な方針とした。その他の有機質資材の活用も検討した。バイオ炭の添加量の増減の範囲とN2O排出との関係を、ポット試験を行った。 研究結果:N2O排出低減を目指す混合堆肥複合肥料の開発のため、今年度はペレット型造粒による試作品の開発に着手した。試作作業は、朝日アグリア株式会社埼玉工場で実施した。表1001に、NPKの配合比率を示した。 資材の混合比率を調整し、酸性、アルカリ性、中性、それぞれのpHに設定した。また、もみ殻炭を添加したペレットも試作した(表中のもみ殻炭と記した項目が該当)。上記試作ペレットを畑圃場に施用して、キャベツ、コマツナを栽培し、N2Oフラックス、無機態窒素、地温、土壌水分を計測した。観測結果については現在データ解析中である。 現段階では、どの配合比率が最もN2O低減と栽培効果(肥効)の両立をするかの予断をすることはできない。ガス発生量の解析と収量調査の結果の確定を待って次の試作品制作案を検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R2年度は、ペレット堆肥を構成する主たる資材の混合比を検討し、肥効とN2Oの最適化に向けた栽培試験を試行する計画としていた。
予定通り、試作としてのペレットの製造を実施し、これを畑圃場に施用して、2度の野菜作圃場試験を実施することができた。pHレベルを3水準調整した条件で、肥効とN2O排出の関係を検証する作業が順調に進んでいる。ただし、COVID-19の影響で圃場との行き来については制限が生じている関係から、当初予定していた頻度での観測よりは少ない頻度となっている点が、おおむねというレベルにとどまる理由である。上記試作ペレットを畑圃場に施用して、キャベツ、コマツナを栽培し、N2Oフラックス、無機態窒素、地温、土壌水分を計測した。表表1001-2には圃場に施肥した際の施肥量を示した。観測結果については現在データ解析中である。 現段階では、どの配合比率が最もN2O低減と栽培効果(肥効)の両立をするかの予断をすることはできない。ガス発生量の解析と収量調査の結果の確定を待って次の試作品制作案を検討していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年(2020)秋、今年(2021)春の2期について、試作した混合たい肥複合肥料ペレットの畑施用によるN2O排出量の増減について解析を進めている。現在のところ、肥効と温室効果ガス削減についてはpH依存性との間に相反する傾向が表れており、このままで一般に供給できるベストの混合比にはなり得ていない段階にある。作物についてもアルカリを好む品種、酸性を好む品種の双方があることから、そうした作目ごとの適正も考慮した試作品設計を進めていく考えである。特に、有機態窒素の集積はN2Oの排出を招きやすい傾向があるため、適切な分散媒の取り込みがキーとなってくる。一方でペレット加工に関しては、造粒効率(粘着度)なども考慮する必要があり、重量、成分比率、造粒効率を総合的検討したうえであらたな試作品づくりを進める方針である。今年度の試験期間中ですべての候補配合比率や圃場試験を網羅することは困難であることから、この課題に続く新たな展開についても検討していきたい。
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