研究課題/領域番号 |
19H03103
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
井上 直子 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (90377789)
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研究分担者 |
平林 真澄 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 准教授 (20353435)
松山 秀一 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50455317)
上野山 賀久 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70324382)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | キスペプチンニューロン / プリン作動性神経 / 排卵 |
研究実績の概要 |
本研究は、排卵中枢である視索前野/前腹側室周囲核キスペプチンニューロンを上位から制御する新規な神経シグナルとしてATP-プリン受容体シグナリングに着目し、プリン作動性神経の同定と、同神経の活性化メカニズムの解明により、いつ、どのようなメカニズムによりATPシグナルが前腹側室周囲核キスペプチンニューロンに入力・活性化するのかを明らかにすることで、排卵制御の新たな神経機構を解明することを目的としている。 本年度は、ラットを用いた組織学的解析をすすめ、排卵の指標である黄体形成ホルモンのサージ状分泌が生じる前にプリン作動性神経細胞が活性化する神経核を複数特定した。また、それらの神経核のプリン作動性神経細胞には、エストロジェン受容体αが発現していることも見いだした。現在、神経トレーサー解析により、これらのプリン作動性神経細胞から前腹側室周囲核キスペプチンニューロン近傍への神経投射を解析中である。 また本年度は、キスペプチンニューロン(Kiss1遺伝子)特異的にCre組み換え酵素を発現する遺伝子改変ラット(Kiss1-Creラット)の作出にも成功した。今後、小麦胚芽レクチンなどの神経トレーサーを発現するアデノ随伴ウィルスベクターを脳領域的特異的に投与し、前腹側室周囲核キスペプチンニューロンに直接入力する神経経路の解析をすすめる予定である。 in vitro系による解析については、マウス前腹側室周囲核キスペプチンニューロン由来不死化細胞株を購入し、カルシウムイメージング解析を現在実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、排卵の指標である黄体形成ホルモンのサージ状分泌が生じる前にプリン作動性神経細胞が活性化する神経核を特定できたことと、Kiss1-Creラットの作出に成功したことから、今後神経トレーサー解析をすすめることにより、前腹側室周囲核キスペプチンニューロンに入力するATPシグナルの同定が可能となる。このように研究は順調に進展している。 また、マウス前腹側室周囲核キスペプチンニューロン由来不死化細胞株によるカルシウムイメージング解析の立ち上げも順調に進んでおり、今後ATP-プリン受容体シグナリングの解析をすすめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、キスペプチンニューロン(Kiss1遺伝子)特異的にCre組み換え酵素を発現する遺伝子改変ラット(Kiss1-Creラット)に、小麦胚芽レクチンなどの神経トレーサーを発現するアデノ随伴ウィルスベクターを脳領域的特異的に投与し、前腹側室周囲核キスペプチンニューロンに直接入力する神経経路の解析をすすめる予定である。また、細胞内 Ca2+濃度変化をキスペプチン放出の指標として用い、マウス前腹側室周囲核キスペプチンニューロン由来不死化細胞へのATPまたはATP・プリン受容体拮抗薬共添加による細胞内Ca2+濃度変化を解析することで、ATP-プリン受容体シグナリングがキスペプチンニューロンを直接活性化するかどうかを検討する予定である。さらに、ラットで明らかにした知見が家畜に応用できるかを検証するため、シバヤギの視索前野近傍にATPを投与し、黄体形成ホルモン分泌を誘起できるかどうかを検証するとともに、プリン受容体拮抗薬を投与し血中LH分泌を指標として黄体形成ホルモン一過性大量放出をブロックできるかを検証する予定である。
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