体外受精(IVF)は、家畜ウシの増頭や遺伝的改良上有用性の高い繁殖技術であるが、ウシの体外受精によって作出された卵(IVF卵)に付随する未解決課題として、母子双方の損耗につながる過大子症候群(LOS)のリスク増がある。本研究では、LOSを防止する根本的な解決法を探るために、体内受精卵とIVF卵、正常産子と過大子の胎盤組織のエピゲノム(ゲノム全体にわたるエピジェネティック修飾情報)の統合解析を行い、エピゲノムについての受精卵の段階での差異(体内受精卵 vs. IVF卵)と胎盤組織での差異(正常子 vs. 過大子)を照合することにより、受精卵の段階ですでに決まっていると考えられる、LOSに関わるエピジェネティック修飾(LOS関連エピゲノム)を解明することを目的とした。さらに、LOS関連エピゲノムの受精卵段階でのスクリーニング方法の創出も合わせて目的とした。本年度は、2021年度までに蓄積した胎盤組織のヒストンメチローム解析結果の内、H3K4me3修飾についての部分をまとめ学会発表を行い、現在論文を投稿準備中である。また、各種多変量解析手法を用いて、過大子症候群のリスクと関連する特徴的なヒストン修飾マーカーの絞り込みを行い、受精卵におけるそのスクリーニング方法の洗練をさらに進めた。スクリーニング方法については、受精卵のバイオプシーに対する適用も含めた。また、これらの受精卵のスクリーニング方法開発の基盤となる1個単位の受精卵におけるヒストン修飾検出方法を学会発表するとともに、学術論文として出版した。
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