研究課題/領域番号 |
19H03105
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
木村 康二 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (50355070)
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研究分担者 |
山本 ゆき 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20645345)
松山 秀一 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50455317)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子宮腺 / ウシ / 管腔形成 / 胚伸長 |
研究実績の概要 |
昨年度の結果からウシ子宮内膜より単離した子宮腺をマトリゲル内に包埋し、EGF、WNT3a, 5a, 7a添加状態で培養すると子宮腺様構造が形成されることが示された。今年度はまず、これらの因子がこの腺様構造形成に寄与しているのかどうかについて検討した。EGFを除去した場合、シスト形成は見られたが、腺様構造は見られなかった。一方、WNTすべてあるいは各WNTを1種ずつ取り除いた培養液で培養した場合は対照区と同様に腺様構造が確認出来た。さらにEGF存在下でCanonical WNT 経路および WNT 分泌阻害剤を添加し、子宮腺様構造の形成に影響があるかどうかについて検討を行ったが、これら阻害剤の添加により形成された子宮腺様構造の形成率は影響を受けなかった。また、得られたシストおよび子宮腺様構造を固定し、サイトケラチン(上皮細胞マーカー)およびビメンチン(間葉系細胞マーカー)で免疫染色した。シストおよび子宮腺様構造ともサイトケラチンポジティブ/ビメンチンネガティブとなり、腺様構造を形成する細胞は上皮系細胞であることが明らかとなった。 これまで、単離した子宮腺断片を用いて研究を行っていたが、この断片をトリプシンで消化し、細胞懸濁液とした後、マトリゲル上に播種して培養を行った。EGFおよびWNT存在下でシスト形成が見られたため、このシストをゲルに包埋し培養したところ上記のような子宮専用構造の形成は見られず、シストのままであった。 次に、生後の子牛にプロジェステロン製剤を投与し、子宮腺ノックアウト個体作出を行っていたがその子牛が性成熟月齢に達したため、性周期および子宮内膜組織のバイオプシーを行い、子宮腺の存在の有無を組織学的に検討した。対照区と比べて性周期に変化は見られず、さらに組織学的観察から子宮腺の存在が確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実施計画から、今年度はウシ子宮腺様構造の形成因子の同定と子宮腺ノックアウト個体の評価を実施する予定であった。コロナ禍で研究に制限されていたが順調に進捗し予定の実験は終了した。一方、子宮腺ノックアウトも計画通りホルモン処置した子牛が性成熟期を迎えたが、予測通りの結果が得られなかったため、次年度再度子宮腺ノックアウト個体作出を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
①体外作出子宮腺様構造の機能解析:これまでの研究の中で様々な因子の添加や非添加などの培養条件下において作出された子宮腺様構造細胞塊の機能について検討する。得られた細胞塊におけるサイトケラチンやビメンチンの発現を免疫組織化学を用いて検討し、構成細胞のキャラクタリゼーションを行うとともに、子宮内膜上皮分泌タンパク質や胚伸長関与タンパク質の遺伝子発現について検討する。またこれまでの研究から、この構造体は子宮腺上皮から形成されるが、子宮腺は子宮内腔から子宮外膜方向に垂直方向に子宮粘膜内に深く陥入し、末端部では多枝分岐する。このような腺構造において部位によって細胞のキャラクターが異なっていることが示されているため、子宮腺を内腔側および子宮外膜 側に分けて採取し、体外における子宮腺様構造の形成率の違いや、構成細胞のキャラクタリゼーションならびに子宮分泌タンパク質や胚伸長関与タンパク質の遺伝子発現について検討する。 ②子宮腺ノックアウトウシの作出:これまでに生後すぐにプロジェステロン製剤を筋肉内投与することによって高濃度P4曝露処理を行ったが、2020年度の結果から子宮内膜内での子宮腺の消失が確認出来なかった。よってウシではヒツジと同様のホルモン処置ではノックアウト個体の作出が困難であることが示されている。今年度はホルモン投与量の検討(P4投与量を増加させる)やP4だけでなくエストロジェン製剤と組み合わせることにより、より効果的な子宮腺ノックアウトウシ作出手法の確立を試みる。
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