3次元培養によって得られた子宮腺様構造には細胞の多層化・重層化が認められるが,部分的な内腔を再形成が見られた。伸長した重層化部分のうち,内腔と接した細胞の細胞接着間ではタイトジャンクションマーカーであるZO-1の局在が確認されたことから,子宮腺様構造では部分的に頂底極性が回復していること考えられた.子宮腺様構造を子宮内での胚の生育時期と同様の性ステロイドホルモン濃度で培養したところ,無処理区と比較して分泌タンパク質(SERPINA14・SPP1)の遺伝子発現に変化が見られたものの有意な差は認められず,また,これまでに報告されている子宮内膜におけるこれらの遺伝子発現とは完全に一致しなかった.また,EGFと同じ成長因子であるFGF2は3次元培養した乳腺上皮細胞で子宮腺と同様に腺様構造を形成させることが報告されていたが,FGF2を3次元培養したウシ子宮腺に添加しても,EGFと同様の子宮腺様構造の形成は認められず,シストのみを形成させた.このことから,3次元培養における子宮腺様構造の構築はEGF特異的な効果であることが確認された.マトリゲルとタイプ1コラーゲンを混合したゲルで3次元培養した子宮腺は,マトリゲルの単独ゲルと比較して,有意に子宮腺様構造の伸長部分を長くさせ,伸長の直線性を亢進させた.一方,ゲルの違いに拠らず,子宮腺様構造は細胞増殖マーカーであるKi67陽性細胞で構成されており,陽性細胞の組織内での局在に変化は認められなかった.子宮腺ノックアウト牛作出については、投与プロジェステロン製剤量を増やしたところ、投与後速やかに血中プロジェステロン濃度の上昇が見られた個体において、バイオプシーした子宮内膜組織内に子宮腺の存在が確認できなかった。
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