研究課題/領域番号 |
19H03106
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西野 直樹 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (50237715)
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研究分担者 |
鶴田 剛司 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (90728411)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 飼料 / 微生物 / アンプリコン解析 / 発酵 |
研究実績の概要 |
暖地型牧草、食品副産物および混合飼料(TMR)を対象とし、実験室規模でサイレージを調製した。貯蔵温度を3水準(10℃、25℃、40℃)設定し、1週間、2週間、2ヶ月および6ヶ月後に開封して、発酵生成物、好気的安定性および微生物叢を調査した。冷涼(10℃)および暑熱(40℃)環境での貯蔵が、貯蔵性と好気的安定性をどれほど変動させるかを課題とした。細菌叢のアンプリコン解析は16S rRNA遺伝子のV4領域を、真菌叢のそれは26S rRNA遺伝子のITS領域を対象として行っている。 微生物叢解析まで終了したのは、食品副産物のサイレージである。Acinetobacter spp.がLactobacillus spp.より優勢でありながら、乳酸優勢の発酵特性を示すという興味深い知見が得られるとともに、貯蔵期間が長くなるとBacillus spp.が増加して乳酸生成を維持するという新規性に富む知見も得られた。一方、真菌叢は貯蔵性および好気的安定性と関連する変化を示しておらず、細菌叢と真菌叢のネットワーク解析も今後の課題である。暖地型牧草サイレージは酢酸優勢の発酵特性を示すことが多いが、それが十分再現されたサンプルが得られており、現在細菌叢および真菌叢のアンプリコン解析を進めている。これらのサイレージから培養法による有用乳酸菌の分離および選抜も進めており、意図的に変敗させたサンプルから酵母およびカビの分離も行っている。実規模サイレージのサンプリングも行っており、それらの微生物叢解析も予定通り進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細菌叢と真菌叢の統合的解析で学術的なブレークスルーを達成するというレベルにはまだ遠いが、アプリコン解析を行うことでこれまで報告例のない知見が複数得られている。COVID-19の影響で実態調査が難しくなっており、かつ研究成果を発表できる学会の開催も不透明である。それらが今後どのように影響するかは分からないが、初年度の研究成果は一定の評価ができる水準にある。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は実規模サンプルを対象とした調査研究が当初予定より少なかったので、実態調査を拡大してアンプリコン解析、予測メタゲノム、ネットワーク解析を行う。長期貯蔵時の空気侵入や開封後の空気暴露のように、サイレージの微生物研究では細菌叢と真菌叢の両者を調べることが際立って重要である。多様な相互作用の事例を現地サンプルから得るというのが本研究の特色であり、多様な草種についてロールベールサイレージの調査事例を増やす予定である。混合微生物製剤のパイロット試験を行うための、生菌分離もこれまで通り行う。乳酸菌については、添加実験の前例がないユニークな菌種が2種得られている。初年度の結果から、Bacillus spp.も分離対象とすることが望ましいと判断され、真菌(とくに酵母)を含めた生菌分離を初年度以上に実施する。
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