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2020 年度 実績報告書

卵巣間質の間葉系幹細胞に着眼した卵巣加齢化メカニズム解明と予防・根治法開発

研究課題

研究課題/領域番号 19H03108
研究機関広島大学

研究代表者

島田 昌之  広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (20314742)

研究分担者 中村 隼明  広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (30613723)
磯部 直樹  広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (80284230)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード卵巣 / 酸化ストレス / 線維化 / 感染
研究実績の概要

加齢や肥満などの要因で,卵巣間質が線維化することを明らかとした.この繊維化が,酸化ストレスに起因する炎症により引き起こされることが明らかとなったことから,酸化ストレスを軽減する外因性抗酸化因子を飲水投与することで,マウスの雌繁殖能力に及ぼす影響を検討した.その結果,抗酸化因子であるPQQの飲水投与により,二次卵胞から胞状卵胞への発育時に生じる卵胞閉鎖が抑制され,多くの卵胞が排卵刺激に反応する排卵前卵胞へと発達した.この酸化ストレスは,細胞増殖に必要なミトコンドリアにおける呼吸代謝により発生することから,卵胞発育時には酸化ストレスが発生する宿命にあり,優勢卵胞では内因性の抗酸化因子で,そのストレスを低減しているが,閉鎖卵胞では除去ができず,細胞死を誘導すると考えられた.また,細胞増殖は,顆粒膜細胞が排卵刺激に反応するためにDNAの脱メチル化を引き起こすために必要であることも明らかとした.したがって,細胞増殖を担保し,かつ酸化ストレスを低減されたPQQ処理マウスでは,多数の卵胞が発達し,それらが排卵刺激に反応して,卵成熟,排卵が誘起され,その成熟卵は正常な受精および発生能力を有していた.さらに,卵巣の炎症は,発現するTLR2,4,7,8を介して,細菌やウイルス感染によっても引き起こされ,感染により排卵刺激への感受性を失うことも明らかとなった.以上から,卵巣で発生する酸化ストレスや感染による炎症が,卵巣機能を低下させうる要因であることを示すことができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

卵巣間質に存在する間葉系幹細胞が,酸化ストレスや感染による炎症環境で,線維芽細胞へと分化している可能性を示したことは,間葉系幹細胞の卵巣間質での存在を同定し,かつ,その分化への環境要因を解明することを目指した本研究の目的に合致していると考えている.

今後の研究の推進方策

卵巣間質に存在する間葉系幹細胞が,発情周期依存的に動態を大きく変化さえることから,間葉系幹細胞の起源を明らかとするために,顆粒膜細胞でのみGFPを発現するトランスジェニックマウスを用いた研究を実施する.さらに,GFP陽性細胞の動態解析により,その環境に伴う分化の違いを解明することで,本研究の目的を達成する.また,ウシ卵巣を用いた研究も加速させ,マウスのみでなく,家畜卵巣における間質の変化の解明を試みる.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)

  • [国際共同研究] Baylor College of Medicine(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Baylor College of Medicine
  • [雑誌論文] Pretreatment of ovaries with collagenase before vitrification keeps the ovarian reserve by maintaining cell-cell adhesion integrity in ovarian follicles.2020

    • 著者名/発表者名
      Kawai T and Shimada M
    • 雑誌名

      Sci Rep

      巻: 10 ページ: 6841

    • DOI

      10.1038/s41598-020-63948-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Iron deficiency induces female infertile in order to failure of follicular development in mice.2020

    • 著者名/発表者名
      Tonai S, Kawabata A, Nakanishi T, Lee JY, Okamoto A, Shimada M, Yamashita Y
    • 雑誌名

      J Reprod Dev

      巻: 66 ページ: 475-483

    • DOI

      10.1262/jrd.2020-074

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Impact of lipopolysaccharide administration on luteinizing hormone/choriogonadotropin receptor (Lhcgr) expression in mouse ovaries.2020

    • 著者名/発表者名
      Adetunji AO, Kawai T, Shimada M
    • 雑誌名

      J Reprod Immunol

      巻: 142 ページ: 103193

    • DOI

      10.1016/j.jri.2020.103193

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cutting the ovarian surface improves the responsiveness to exogenous hormonal treatment in aged mice.2020

    • 著者名/発表者名
      Umehara T, Urabe N, Obata T, Yamaguchi T, Tanaka A, Shimada M.
    • 雑誌名

      Reprod Med Biol

      巻: 19 ページ: 415-424

    • DOI

      10.1002/rmb2.12345

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Adverse effect of superoxide-induced mitochondrial damage in granulosa cells on follicular development in mouse ovaries.2020

    • 著者名/発表者名
      Hoque SAM, Umehara T, Kawai T, Shimada M
    • 雑誌名

      Free Radic Biol Med.

      巻: 163 ページ: 344-355

    • DOI

      10.1016/j.freeradbiomed.2020.12.434

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 哺乳類の雌雄比が1:1となる仕組み2020

    • 著者名/発表者名
      島田昌之
    • 学会等名
      日本繁殖生物学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 生殖細胞におけるミトコンドリアと細胞質,核の情報交換2020

    • 著者名/発表者名
      島田昌之
    • 学会等名
      日本受精着床学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 精子,卵,受精卵の代謝機構と その人為的制御,ARTへの応用2020

    • 著者名/発表者名
      島田昌之
    • 学会等名
      日本IVF学会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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