研究課題
卵巣間質の線維化が,間質細胞の酸化ストレス上昇により引き起こされること,外因性の抗酸化因子をマウスに投与することで,線維化した間質が正常な間質にリモデリングされることを明らかとした。さらに,加齢マウスだけでなく肥満マウスにおいても,卵巣間質に脂肪顆粒を蓄積した細胞が出現し,その周囲の細胞で酸化ストレスが上昇することにより,間質の線維化が起こることも示した。この間質の線維化が引き起こす物性変化を測定した結果,卵巣は硬化し,かつ弾性力が低下していること,この物性的な変化が卵胞内の顆粒膜細胞において細胞骨格を変化させ,顆粒膜細胞の黄体化を促すことも明らかとなった。この排卵刺激前に顆粒膜細胞が黄体化する仕組みについて,メチル化DNA配列の網羅的解析により,DNMT1の発現低下と細胞分裂の促進に起因する大規模なDNAの脱メチル化により引き起こされることも示した。この大規模なDNAの脱メチル化は,正常な卵胞発育では排卵準備が完了する直前に完成するが,卵分泌因子の発現低下により,これが早期に生じることで,卵胞機能不全となることもわかった。さらに,DNMT1の発現低下は,S期特異的に認められ,それは卵分泌因子であるGDF9および顆粒膜細胞が合成するレチノイン酸に依存していることも明らかとした。以上の結果から,卵巣の間質が線維芽細胞や脂肪細胞に分化しやすい細胞で構成され,その一部は間葉系幹細胞であること,線維芽細胞への分化により卵巣が硬化することで,卵胞を構成する顆粒膜細胞のエピジェネティック制御が異常となり,雌の妊孕性が低下する可能性が示された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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