研究課題/領域番号 |
19H03110
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
原口 省吾 昭和大学, 医学部, 講師 (20592132)
豊後 貴嗣 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (40325361)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニワトリヒナ / タウリン / 暑熱ストレス / 神経ペプチドY / 低体温 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に3つの調査・解析を試みた。具体的には、(1)NPYあるいはタウリン中枢投与による体温及び摂食行動への影響、(2)NPYY5及び7受容体を発現させた哺乳類細胞のシグナル伝達系解析、(3)日本鶏におけるNPY受容体一塩基多型の調査を試みた。その結果、(1)中枢NPY投与は、暑熱ストレス下での抗酸化グルタチオン合成を増強し、脾臓HSP-70の遺伝子発現を抑制することが認められた。(2)ニワトリY5-Y7受容体を個別に発現させたHEK293細胞にNPYを添加した場合、ニワトリY5受容体ではcAMPの低下、Y7受容体ではcAMPが上昇した。また、ニワトリY7受容体を発現させたCOS7細胞でも、NPYによりcAMPが増加した。加えて、ニワトリY7受容体を系統樹解析したところ、他の脊椎動物のY2受容体に相当することが分かった。(3)日本鶏を用いて各NPY受容体の一塩基多型(SNP)を調査したところ、Y1受容体では27個、Y5受容体では 57個、Y6受容体では 34個、Y7受容体では 53個のSNPが見つかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
推察される体温低下機構についてはおおむね明らかとしたこと、細胞株を用いた解析は順調に遂行されていること、受容体SNPの検出もなされたことから次年度以降の計画は順調に進展しているものと思われる。ただ、コロナ禍による大学内への立ち入り制限処置や動物の飼育制限などの影響があり、一部に遅れが生じている可能性も否めない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)タウリン体温降下作用におけるセロトニン受容体の役割について明らかにするとともに暑熱下においてNPYが脾臓機能に及ぼす影響についても解明する。(2)ニワトリY7受容体にNPYを添加した際に、どの様な分子機序でcAMP増加が引き起こされるのか解明する。解析にあたっては、ニワトリY7受容体が他の脊椎動物のY2受容体(Gi)相当であるが、ニワトリY7受容体下流ではアデニル酸シクラーゼ活性の増加が引き起こされる可能性(Gs)を考慮するとともに、ニワトリY7受容体は本来Giとして機能するにも関わらず何らかの間接的なシグナル伝達機序によりcAMPが現象として見えている可能性を考慮する。(3)これまで発見した各受容体の一塩基多型と抗暑熱ストレスとの関連性について種々の日本鶏品種を用いて調査する。
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