他の動物のリンパ陰部輪 リンパ陰部輪の存在をブタ、ヤギ、ニワトリ、齧歯目の実験動物で検討した。ブタ、ヤギ、イヌではウシと類似した外陰部・腟前庭関連リンパ組織(GOALT)を腟前庭で確認できるが、腟前庭を欠如する齧歯目では認められない。その代替組織としてマウスでは直腸粘膜リンパ組織を精査した。ブタならびにヤギで腟前庭上皮内にランゲルハンス細胞の出現が認められるが、両者の分布が異なる。マウスにおいて、特定のペプチドで腟内免疫を行うと、腟粘膜にMALT様構造(三次リンパ組織)が出現するという報告がある。これらを総合すると、異物への反応には動物種差が存在している可能性がある。ヤギを用いた観察で、9月に採取した動物では、腟前庭に出血斑が認められたが、12月の動物では出血斑は認められなかった。 また、ホールマウント染色後にリンパ小節の存在を示す青斑の直径を測定したところ、9月のヤギでは約0.3mm、12月のヤギでは0.06mmだった。これらの結果は、生殖のための季節変動によりリンパ陰部輪の発達も変動することを示している。
ワクチン投与を模した墨汁投与実験 リンパ陰部輪はワクチン投与部位としての候補に挙げられる。その有用性を確認するためには遠隔リンパ節に異物が移動するか否かが重要である。候補のリンパ節として肛門直腸リンパ節(ウシウイルス性下痢・粘膜病と関連)、浅鼡径リンパ節(乳房炎と関連)あるいは坐骨リンパ節(子宮蓄膿症と関連)が疑われる。そこで、ヤギを用いワクチン投与を模した異物(カーボン粒子)投与実験を実施した。異物暴露後、浅鼡径リンパ節、深鼡径リンパ節、内腸骨リンパ節、仙骨リンパ節および腸骨下リンパ節を観察した結果、一部の腟粘膜上皮にカーボン粒子が取り込まれ、数は少ないが深鼡径リンパ節にカーボン粒子が検出された。このことは、ワクチン接種部位としてリンパ陰部輪の重要性を伺わせる。
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