研究課題
本研究はバベシアのマダニ体内発育ステージに特異的な細胞表在性蛋白質を網羅的に検出し、その機能を解析するとともに伝搬阻止ワクチン(TBV)抗原としての性能を評価することを目的とする。【材料と方法】Babesia ovata(三宅株)赤血球内発育ステージ(Blood stage)をin vitro誘導法(PubMed ID: 1549158)によりマダニ体内発育ステージ(Tick stage)へと誘導し、RNA-sequence法(RNA-seq.)を用いてTick stage分子の探索を行った。まず、誘導後何時間の原虫をRNA-seq.に用いるか検討した。次に、特徴的な形態が観察され、またRT-PCR法でTick stage遺伝子の発現が確認出来た分画をパーコール密度勾配遠心法で濃縮した。得られた原虫からRNAを抽出し、RNA-seq.に供した。次世代シークエンシング(NGS)でデータを取得し、同時に実施したBlood stage RNA-seq.データとの間で比較解析を行った。【結果】Tick stage誘導後の原虫は様々な形態が認められた。特に誘導後6時間では核を1つまたは2つ有し、短い突起を持つray bodyと呼ばれる特徴的な形態が確認された。また、Tick stageに発現すると予想された遺伝子群の発現が認められた。そこで、TBV標的に適した細胞外発育ステージに相当する、誘導後6時間のTick stage原虫をRNA-seq.に用いることにした。分画濃縮法にて、ウシ赤血球が除かれたTick stage原虫分画を精製し、RNA-seq.に供した。NGS RNA-seq.データをBlood stage/Tick stage間で比較解析したところ、Blood stageよりも Tick stageで発現量が2倍以上大きい遺伝子は413個あり、特にTick stageにおいて十分な転写産物発現量があると考えられる遺伝子は253個あった。【考察】Tick stage原虫では、DNAの複製に関連する遺伝子の発現上昇が認められ、このステージでの活発な細胞分裂(原虫増殖)が裏付けられた。
3: やや遅れている
RNAシーケンス実験のデータから、サンプル採取時期に起こるマダニ体内ステージの分化について興味ある結果を得ることができたが、TBV候補の同定には至っていない。
現在、当該データセットの再解析をおこなうことで、TBVの候補となる表在性蛋白質遺伝子の同定を進めている。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)
Vet. Sci.
巻: 8(10) ページ: 222
10.3390/vetsci8100222.
Sci. Rep.
巻: 11(1) ページ: 16959
10.1038/s41598-021-96365-w.
Parasitologia
巻: 1(4) ページ: 218-224
10.3390/parasitologia1040023
https://www.obihiro.ac.jp/facility/protozoa/
https://www.obihiro.ac.jp/facility/protozoa/en