研究課題/領域番号 |
19H03122
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 和幸 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10223554)
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研究分担者 |
チェンバーズ ジェームズ 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (00621682)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 消化管リンパ腫 / T細胞性リンパ腫 / CD8 / CD30 / CD56 / 犬 / ネコ / 上皮内リンパ球 |
研究実績の概要 |
シバ犬のDLA型と慢性腸炎や消化管リンパ腫発症との相関を検証したところシバ犬のDLA型は著しくバリエーションに乏しく、慢性腸炎や消化管リンパ腫と関連するDLA型を特定することは非常に困難であることが判明した。 犬の腸管リンパ腫については犬のT/NK細胞性貫壁性リンパ腫61例の全層生検材料を用いて、細胞形態に従い大細胞型(LCL)と小細胞型(SCL)に大別し免疫組織学的に検証した。本研究の結果、LCLの多くはGranzyme B陽性かつCD56陰性で、Cytotoxic T細胞またはγδT細胞の性質を示し、組織像とあわせヒトのWHO分類におけるEATL Type 1 あるいはPTCL-NOSに相当すると考えられた。また、一部のLCLでCD30の発現が認められ、これらは退形成性大細胞性リンパ腫(ALCL)に相当すると考えられた。一方SCLは一定の免疫組織学的特徴に乏しくPTCL-NOS以上の特定は困難であったが、病理学的にLCLやヒトのEATLとは明確に異なる病態であることが示された。 上記に加え内視鏡検査で消化管リンパ腫と病理診断した猫50症例の小腸のサンプルを用い上皮傷害、絨毛萎縮およびリンパ球の上皮向性を評価した。また、CD3,CD8,Granzyme B,CD79αの免疫染色を実施し細胞表現型を検討した。その結果、猫のSCLの多くは組織傷害が極めて軽度であり、Feline intestinal T cell lymphocytosis: FILなどの新しい疾患分類が必要と思われた。またFILおよび小腸T細胞性リンパ腫のリンパ球は主にCD8陽性で、上皮向性やGranzyme B陽性の割合はFIL、SCL、LCLの順に高く、特にSCLやLCLなどのリンパ腫では活性化した細胞傷害性T細胞が上皮細胞を傷害するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
犬の消化管リンパ腫のうち貫壁性リンパ腫については、約90症例の知見をまとめその成果を学会に発表するとともに、海外の学術雑誌へ投稿をしている。 猫の消化管リンパ腫については、主に内視鏡サンプルを利用して、病態の検討が実施され、その研究成果の一部は既に学会に発表した。現在、学術雑誌への投稿のため、研究成果の取りまとめを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、犬と猫でそれぞれ使用可能な種特異性のあるCD4, TCRに対応する抗体を作成し、それぞれの消化管リンパ腫における腫瘍細胞の特性を明確にするとともに、慢性炎症と腫瘍病態を明確に区別するために、上皮傷害などのパラメータに注目して、これらの細胞傷害を決定づける因子の特定を行う予定である。 上記の検討と合わせて凍結標本を用いてレーザーマイクロダイゼッション法により炎症時のリンパ球と腫瘍性リンパ球のmRNAやDNAを検証して、それぞれのT/NKリンパ球のがん関連遺伝子(c-myc、P53、 Bcl-2 等)の発現状態や変異の有無、あるいは薬剤治療抵抗性に関与する遺伝子(p-GP等)の過剰発現や変異の有無を検証する。 シバ犬におけるDLA型と消化管リンパ腫あるいは慢性腸炎の相関については、国内のシバ犬にDLA型のバリエーションが少なすぎるため、特定疾患と白血球型の相関を明確にすることが困難と予想されたため、次世代型シークエンサー等により、リンパ腫発症犬における特異的なSNPが存在するか否かを検証する必要があると考える。
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