研究課題
本年度はまず、研究の立ち上げに際し、免負荷式トレッドミルトレーニング用の装置を購入する予定であったが、製造・販売が中止されてしまったことから、入手が不可能となった。代用可能な装置の入手が可能か検討したが、困難であった。次年度以降の脊髄損傷モデルに対するリハビリテーションの介入は、免負荷システムを必要としないトレッドミルトレーニングを用いることとし、脊髄損傷モデルは予定していた重度損傷ではなく、中等度モデルを用いることとした。In vitroにおける検討では、犬間葉系幹細胞(BM-PAC)に対するメカニカルストレスに対する反応においてストレスマーカーとなるpCas130の発現を評価したところ、静的状態では発現がないことが確認された。また、BM-PACの間葉系幹細胞としての基礎的性状において、軟骨分化における新たな知見を得たため、次年度以降の研究に対する基盤的情報とするため、詳細な検討を行った。結果として、BM-PACから軟骨誘導された細胞をBMP-2やGDF-5で刺激することにより、さらに肥大軟骨にまで分化誘導できることを明らかにした。肥大軟骨への血管誘導は石灰沈着を経て、軟骨内骨化による骨形成にいたるが、この発生過程は関節軟骨から軟骨下骨の発生においてみられる現象に類似していることから、本手法を用いた関節の再生医療の可能性が期待できる。また、関節軟骨に対する再生医療においても、運動療法などのリハビリテーションが再生軟骨にどのような影響を及ぼすかは不明な点が多く、今後、本結果を利用し、軟骨損傷においても再生医療とリハビリテーションの融合を検討できると期待できた。
4: 遅れている
本研究は脊髄損傷における再生医療とリハビリテーションの融合であるが、リハビリテーション研究で購入・利用予定であった免負荷式トレッドミルの販売・製造中止をうけ、in vivo実験を遂行することが困難となった。現在、代替法を検討中であり、次年度では用いる脊髄損傷モデルを中等度損傷モデルも変更することで免負荷を行わずトレッドミルトレーニングを介入させた実験系を利用する予定である。また、細胞へのメカニカルストレスを付与した研究に取り組む予定であったが、コロナウイルスによる実験の中断を余儀なくされ、予定通りの進捗が得られていない。
次年度は、BM-PACへメカニカルストレスを付与した際のストレスマーカーの発現を評価し、与える至適ストレスを定めることから始める。その後、血管新生促進因子や血管系細胞への分化など、組織再生に対する寄与の程度を血管再建の面から評価する。in vivoでの細胞治療とリハビリテーションの関連を評価するため、中等度脊髄損傷モデルを用いることとし、損傷部へホーミングした細胞の追跡と、ストレスマーカー等の発現を解析することで、移植後の細胞がリハビリテーションによりうけるメカニカルストレスの存在を明らかにする。
すべて 2020 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
iScience
巻: 23
10.1016/j.isci.2020.100874.
http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/geka/