研究課題
本年度は、犬間葉系幹細胞におけるメカニカルストレスの評価系を確立する目的で、メカニカルストレスに対するストレスマーカーの1つとして知られているp130Casの検出法を検討した。過去に犬乳腺腫瘍細胞にてp130Casの発現と悪性度の相関がみられる報告をもとに、まず、犬乳腺腫瘍細胞株を用いてウェスタンブロット法によりp130Casの検出を行うとともに、Rock阻害薬を添加することでp130Casをダウンレギュレーションした乳腺腫瘍株を用いて検出系の制度検証を行なった。しかし、ウェスタンブロット法による検出では、p130Casの定量的な評価は困難であり、メカニカルストレス応答の検出形については、再考の必要性が生じた。一方、生体内で発生する細胞に対するメカニカルストレスのうち、シアストレスを培養系で再現することを目的に、マイクロ流路を用いたシアストレス発生培養装置の開発を企業と協力して進め、生体内で運動により発生すると仮定しているシアストレスを培養皿上に発生可能な装置の開発を行なった。次年度は、この装置を用いて、シアストレスを犬間葉系幹細胞に与え、性状変化に与える影響を評価する予定で、その準備を整えることができた。
4: 遅れている
p130Casの発現解析がうまく進まず、進捗の遅れを生じた。また、コロナ禍の影響もあり、シアストレス発生培養装置の開発に必要以上の時間を要することとなり、実際に使用した実験を開始できなかった。
次年度は、シアストレス培養装置を用いた実験系を進めていく。具体的には、マイクロ流路内で培養した犬間葉系幹細胞に対して標準的な力でシアストレスを与えた際、間葉系幹細胞の組織再生に寄与する因子の発現変化について明らかにしていく。また、ストレスの頻度や強度を変化させることで、間葉系幹細胞が機能発揮するために最適なストレスが存在するかを明らかにする。これらの実験と並行して、ストレスマーカーの評価系については引き続き検討を行い、p130Cas以外でもYAP/TAZ経路など、他のマーカーを用いた評価系についても取り入れる予定である。さらに、リハビリテーションと脊髄再生医療の組み合わせがどのような臨床的効果をもたらすかを検討するため、脊髄損傷モデルに対する犬間葉系幹細胞移植とトレッドミルを用いたリハビリテーションの有用性について検討を加える予定である。
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iScience
巻: 23 ページ: 100874~100874
10.1016/j.isci.2020.100874
http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/geka/Results.html