研究課題/領域番号 |
19H03125
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 正敏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70211547)
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研究分担者 |
江藤 真澄 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (20232960)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ミオシン / ホスファターゼ / 平滑筋 / 血圧 / CPI-17 / ノックインマウス / 消化管運動 |
研究実績の概要 |
ミオシンのリン酸化は、平滑筋細胞や多くの非筋細胞の収縮、細胞運動、遊走、物質透過 性、および細胞内物質輸送などに関与する。ミオシンのリン酸化はミオシン軽鎖キナーゼとミオシンホスファターゼ(MPPase)の活性バランスにより調節される。MPPase活性はPKC/CPI-17経路とROCK/MYPT1経路という二つの負の制御経路の調節を受けるが、これらの経路の生体内での生理・病態生理学的役割は依然不明である。
初年度は、in vitro細胞系でCPI-17のmutagenesis実験を行い、CPI-17のThr38SerのミュータントCPI-17がHEK細胞ではタンパク質のリン酸化が蓄積するフェノタイプを示したことから、同ミュータントのノックインマウスをゲノム編集にて作出した。得られたCPI-17[T38S]ノックインマウスはホモ個体でも外観では野生型マウスと表現型に有意な差は認められなかった。以下、野生型マウス(WT)、CPI-17欠損マウス(KO)、CPI-17[T38A]非リン酸化模倣型ミュータントCPI-17ノックインマウス(TA)、CPI-17[T38S]リン酸化蓄積型ミュータントCPI-17ノックインマウス(TS)を用いて血管や消化管に対する運動性について解析した。
摘出回腸輪走筋を用いた収縮測定実験において、TAならびにKOにおいてカルバコールによる収縮は有意に小さく、TSでは有意に大きい結果を得た。よって、CPI-17のリン酸化がカルバコール収縮に必要なこと、T38位のリン酸化が重要であること、T38Sの変異はCPI-17のリン酸化蓄積型の表現型を示すことが示唆された。また、テレメトリーシステムを用いて、WT、KO、TA、TSにおける正常血圧と食塩負荷高血圧について解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年12月までは順調に研究が進んでいたが、1月から新型コロナウイルス感染の影響が出始め、研究データがでてきているが、それをまとめ上げることができていない状況にある。実験例数が不足している実験もあり、おおよそ、2ケ月分程度の研究遅延を生じている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の収穫として、CPI-17の38位のアミノ酸であるスレオニン(T38)をセリン(S)に置換したCPI-17[T38S]ノックインマウスの作出が軌道に乗り、各種解析がスタートしたことが挙げられる。現段階で例数不足などがあり最終的な結論をだせずにいる状況ではあるが、基本的にCPI-17[T38S]ノックインマウスでは野生型に比べて消化管の収縮増強や、血管の収縮増強が生じている傾向が認められており、in vitroの細胞系で得られた知見『T38Sはリン酸化蓄積型の表現型を示す』を支持する結果が得られている。 従って、次年度以降、野生型、CPI-17欠損、CPI-17[T38A]UP(非リン酸化模倣型の変異CPI-17ノックインマウス)、CPI-17[T38S]PA(リン酸化蓄積型の変異CPI-17ノックインマウス)を用いたin vitro、in vivoの研究を予定通り展開していくことができる。
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