研究課題
牛伝染性リンパ腫症(旧名:牛白血病)はレトロウイルス科のBovine Leukemia Virus: BLVの感染により発症する腫瘍性の感染性疾患である。興味深い事に、BLV感染牛の中には、リンパ腫へ進行しない牛群がある事が知られていた。これは、これらの牛群に特有の免疫遺伝子が、BLV感染時おける免疫防御力を高めている事を示唆する。本研究では、牛の獲得免疫に重要な役割を果たすMHCクラスII遺伝子DRB3のうちDRB3*009:02アリルを保有する牛においては、BLV感染後に病態が進行しないことに着目し研究を実施してきた。本課題の特徴は、家畜である牛を対象とした基礎免疫学的研究である事、特に防御免疫に重要な役割を果たす抗原特異的CD4+T細胞(ヘルパーT細胞)の定量化を実現している事である。人工的に作製した、DRB3*009:02分子とBLV抗原が結合した4量体(MHCクラスIIテトラマー)を利用してヘルパーT細胞を定量する事によって、DRB3*009:02分子が果たすBLV感染症免疫防御の役割を明らかにできる。最終年度では、DRB3*009:02を含む様々なMHCクラスIIテトラマーを作製し、BLV実験感染牛を使ってBLV感染後のBLV抗原特異的ヘルパーT細胞の数的変動を解析する予定であった。この実験計画のうちBLV抗原のヘルパーT細胞認識部位(T細胞エピトープ)の同定及びMHCクラスIIの作製には成功した。しかしながら、計画時点では可能であった牛を使った実験施設(北海道)の確保、実験施設への移動・滞在が困難となる事情が発生し、断念する事になった。結論として、牛におけるMHCクラスIIを使った抗原特異的ヘルパーT細胞の定量は、それ自体難しい免疫学的手法であり、それを確立できたことは大きな成果である。今後、本研究において得られた成果を利用して感染実験を実現できる事を望む。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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