• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実績報告書

肥満細胞腫のチロシンキナーゼ阻害剤耐性化における多様性の解析と個別化治療の構築

研究課題

研究課題/領域番号 19H03131
研究機関日本獣医生命科学大学

研究代表者

盆子原 誠  日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (50343611)

研究分担者 佐々木 崇  札幌医科大学, 医学部, 講師 (50723897)
田崎 弘之  日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (80231405)
呰上 大吾  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80453934)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード肥満細胞腫 / 犬 / トセラニブ / KIT変異 / 耐性化
研究実績の概要

2020年度はTK阻害剤の中でもトセラニブに注目し、トセラニブ未治療の犬の肥満細胞腫の腫瘍組織における超微量のKIT変異の探索と変異KITの性状解析を行った。約160検体の腫瘍組織を収集し、MiSeqを用いたKIT遺伝子のディープシーケンス解析を行った。この解析におけるdepths of coverageは超微量クローンが検出できるよう、少なくとも8000reads/baseの検出感度が得られる条件で解析した。その結果、KIT exon 2, 5, 6, 7, 9, 11, 17, and 21に34種類の変異が特定された。これらの中には従来からトセラニブ感受性として知られるITD変異の他、17種類のnon-ITDが含まれていた。さらにこの17種類の中には、前年度に培養細胞株においてトセラニブ耐性化にかかわる変異として同定されたc.2456A>T変異が含まれていた。この変異はトセラニブ感受性KIT c.1523A>T変異を有するトセラニブ感受性肥満細胞腫細胞株がトセラニブ耐性を獲得するプロセスで生じるKITの二次変異として同定された変異である。このことから、トセラニブ未治療の犬の肥満細胞腫の腫瘍組織において、予めトセラニブ耐性クローンが存在していることが示唆された。さらに、この変異は腫瘍サンプル中のallele frequencyが0.78%ときわめて微量であり、これは当初想定していた腫瘍組織中のトセラニブ耐性素因を持つ超微量クローンがトセラニブによる治療過程で選択的に増加することで最終的に腫瘍組織が耐性を獲得するとの考えを支持する結果であった。一方、他の16種類の変異についてはこれまでトセラニブに対する感受性を解析した報告がなく、腫瘍のドライバーあるいは耐性化としての役割は不明である。これらについては、本年度(2021年度)に検討を進める。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

MiSeqを用いた培養細胞のKIT遺伝子ディープシーケンス解析はすでに2019年度に確立していたが、臨床検体における検出感度については多少の心配があった。しかし、様々な条件検討により8000reads/baseときわめて高い検出感度で解析できることが明らかとなった。これにより、肥満細胞腫の腫瘍組織における超微量のトセラニブ耐性化KIT変異をとらえることができた。また、この解析において機能が同定されていない新たな微量の(すなわちallele frequencyの低い)KIT変異が同定された。これらの機能解析は2021年度に行う予定であるが、これまでのところ、想定していたレベルの変異の同定を行うことができており、研究は順当に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

2021年度は、2020年度に同定した全ての新規KIT遺伝子変異、さらにそれらに加えてこれまで報告されたKIT変異で性状解析が行われていない変異に注目して、KITリン酸化に及ぼす影響とチロシンキナーゼ阻害剤(とくにトセラニブ)の影響を検討する。これには組み換え蛋白を用いる予定であるが、その実験系はすでに確立しており、このため研究は順調に進展するものと予測している。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件)

  • [国際共同研究] University of Bologna(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      University of Bologna
  • [雑誌論文] A canine case of malignant melanoma carrying a KIT c.1725_1733del mutation treated with toceranib: a case report and in vitro analysis2021

    • 著者名/発表者名
      Tani Hiroyuki、Miyamoto Ryo、Noguchi Syunya、Kurita Sena、Nagashima Tomokazu、Michishita Masaki、Yayoshi Naoko、Tamura Kyoichi、Bonkobara Makoto
    • 雑誌名

      BMC Veterinary Research

      巻: 17 ページ: 147~147

    • DOI

      10.1186/s12917-021-02864-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Commitment toward cell death by activation of autophagy with survivin inhibitor YM155 in two canine squamous cell carcinoma cell lines with high expression of survivin2021

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto Ryo、Tani Hiroyuki、Ikeda Tomoyo、Saima Hono、Tamura Kyoichi、Bonkobara Makoto
    • 雑誌名

      Research in Veterinary Science

      巻: 135 ページ: 412~415

    • DOI

      10.1016/j.rvsc.2020.10.025

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Foxp3+ Regulatory T Cells Associated With CCL17/CCR4 Expression in Carcinomas of Dogs2020

    • 著者名/発表者名
      Maeda Shingo、Nakazawa Maho、Uchida Mona、Yoshitake Ryohei、Nakagawa Takayuki、Nishimura Ryohei、Miyamoto Ryo、Bonkobara Makoto、Yonezawa Tomohiro、Momoi Yasuyuki
    • 雑誌名

      Veterinary Pathology

      巻: 57 ページ: 497~506

    • DOI

      10.1177/0300985820921535

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nimustine Treatment of 11 Cases of Canine Histiocytic Sarcoma2020

    • 著者名/発表者名
      Tani Hiroyuki、Kurita Sena、Miyamoto Ryo、Sawada Harumi、Fujiwara-Igarashi Aki、Michishita Masaki、Azakami Daigo、Hasegawa Daisuke、Tamura Kyoichi、Bonkobara Makoto
    • 雑誌名

      Journal of the American Animal Hospital Association

      巻: 56 ページ: 146~146

    • DOI

      10.5326/JAAHA-MS-6959

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The secondary KIT mutation p.Ala510Val in a cutaneous mast cell tumour carrying the activating mutation p.Asn508Ile confers resistance to masitinib in dogs2020

    • 著者名/発表者名
      Gentilini Fabio、Turba Maria Elena、Dally Claire、Takanosu Masamine、Kurita Sena、Bonkobara Makoto
    • 雑誌名

      BMC Veterinary Research

      巻: 16 ページ: 64~64

    • DOI

      10.1186/s12917-020-02284-9

    • 査読あり / 国際共著

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi