研究課題/領域番号 |
19H03134
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷本 啓司 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90261776)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゲノム刷り込み / 遺伝子改変マウス / 制御分子 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに、多数の遺伝子改変マウス系統を作製・解析することで、ゲノム刷り込み現象に必須のH19-ICR内cis配列を118-bpにまで絞り込んできた。本研究の目的は、同配列に結合するタンパク質性因子を同定し、そのin vivoでの機能検証をおこなうことで、新規エピジェネティック遺伝様式の分子基盤を明らかにすることである。また、これまでに申請者を含むいくつかのグループが、マウスH19-ICR配列を用いて、マウスモデルでの刷り込みメチル化再現に成功したが、構造のよく似たヒトH19-ICRでは、全く成功例がなかった。そこで、ヒトのH19-ICRや、さらには、他のDMRのメチル化制御機構との共通性と特異性を明らかにすることで、ヒト・ゲノム刷り込み疾患の発症機序についての理解を深める。 2020年度は、(1)ヒト断片を用いてトランスジェニック・マウス(TgM)を作成した結果、着床前胚ではアリル特異的なメチル化が観察されたが、この受精後刷り込みメチル化は着床後に失われることが分かった [Hum. Mol. Genet. (2020) 29:3646-61]。そこで、この種差の原因を探るため、ラットの同配列用いたTgMを作成した。また、(2)精子や初期胚に存在すると考えられる118-bp配列結合候補因子をin silicoで探索し、いくつかの候補を同定した。これら候補因子について、ゲノム編集法によるノックアウトマウス作成を開始した。さらに、(3)受精後刷り込みメチル化メカニズムの、遺伝子座を超えた保存性の検証のために、H19-ICRと同様に父親由来で特異的にメチル化されるDlk1-Gtl2遺伝子座配列を用いたTgMの作成を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新型コロナ感染拡大防止のため、細心の注意を払いながらの研究実施状況ではあったが、(1)計画の柱の一つであるヒトH19-ICR TgMの作成と解析については、国際一流誌での公表に至った。また、(2)新規制御候補因子の遺伝子改変マウス作成も開始できた。さらに、(3)他遺伝子座での受精後刷り込みメチル化解析も順調に進捗しているため。
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今後の研究の推進方策 |
非常事態宣言の発令など、不測の事態を織り込みながらも、新規に作成した遺伝子改変マウスの解析を、当初の計画通りに、また慎重に進めていく。
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