生体のほぼ全ての組織には常在性のマクロファージが存在する。これら組織常在性マクロファージは各組織に特異的な表現型を獲得し、組織の正常な働き(恒常性)に必須の役割を担う。一方、組織常在性マクロファージの発生や機能の異常が自己免疫疾患、メタボリックシンドローム、線維化、神経変性疾患など様々な病気と密接に関わることが明らかにされつつある。本共同研究ではマクロファージが組織特異性を獲得するメカニズムの解明を目指す。 これまでマウスの様々な組織(腹腔、肺、肝臓、腸管、脂肪組織、脾臓、精巣、腎臓など)から常在性マクロファージを単離し、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を行った結果、マクロファージの組織特異性を制御することが考えられる候補因子群を各組織で同定することに成功した。これら候補遺伝子のいくつかについて、マクロファージを標的とした遺伝子改変マウスを樹立している。今年度はそれら系統のうち、腹腔に局在するマクロファージで特異的に発現する走化性因子受容体に着目し、この受容体を欠損する遺伝子改変マウスの解析を行った。本マウスでは肝臓や肺などの組織でのマクロファージ細胞数に変化は見られないが、腹腔に常在するマクロファージの細胞数が顕著に減少することを見出した。このことからこの遺伝子産物を介したシグナルがマクロファージの腹腔局在に必須であることが考えられた。
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