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2019 年度 実績報告書

ノンコーディングRNA獲得による霊長類脳エピゲノム成立機構の実験的解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H03138
研究機関九州大学

研究代表者

今村 拓也  九州大学, 医学研究院, 准教授 (90390682)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードノンコーディングRNA / エピゲノム / 霊長類 / オルガノイド
研究実績の概要

本課題は、偽遺伝子挿入あるいは塩基置換によるノンコーディングRNA(ncRNA)獲得と機能化が、既存のタンパク質をコードする遺伝子の発現スイッチを多様化しうる、という独自の発見を発展させるものである。特に、霊長類の種特異的長鎖ncRNA(lncRNA)群を介した脳遺伝子発現活性化機構に着目し、ゲノム編集脳オルガノイドのハイスループット産生系構築、トランスジェニック・イメージング・バイオインフォマティクス技術の活用を基礎に課題を進行する。本年度は、齧歯類と霊長類の神経幹細胞におけるディープシーケンシングの結果をバイオインフォマティクスにより解析し、霊長類で発現が亢進している遺伝子情報を網羅した。このうち転写因子に絞り、プロモーターノンコーディングRNA(pancRNA)が存在するものについて、その機能解析を、まず、ヒトiPS由来神経幹細胞の培養系にて行った。pancRNAをノックダウンすると当該転写因子のいずれのmRNAも発現減少したことから、pancRNAは標的遺伝子の発現を正に制御する因子であることがわかった。このことは、これまでに研究代表者がバイオインフォマティクスを駆使することで見出していた、pancRNAの遺伝子活性化機能を反映するものと考えられた。また、標的遺伝子のひとつについてオーソログ発現コンストラクトをマウス胎仔脳室内に注入し、エレクトロポレーションにより強制発現させたところ、神経幹細胞の増殖が亢進した。したがって、霊長類特異的pancRNAは機能的であり、下流遺伝子の発現調節をすることにより、神経幹細胞の数を制御できることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は神経幹細胞における霊長類特異的ncRNA情報の網羅に成功し、さらに、転写因子に絞った機能解析にも進むことができた。次年度以降はこのパイプラインを活かすことで、より精度の高い霊長類特異的機能ncRNAデータベースが拡充することが期待できる。今後は、そのデータベースから、種特異性獲得における分子メカニズムを推定していくことが重要であると考えており、そのための準備が整ってきた。

今後の研究の推進方策

今後は、独自に作成してきたlncRNAデータベースを精細化し、種特異的lncRNAの効果の最大化につなげていく。
(ⅰ) lncRNAと協働するトランス因子候補の同定
ゲノム三次元構造解析を行い、トランスクリプトーム情報と合わせることで、lncRNA依存的三次元構造情報を網羅し、プロモーター-エンハンサーのペアの体系化を目指す。Hi-C法を基礎としたプロトコールにより行い、既に実績もある(平成28年度文科省新学術領域研究「先進ゲノム支援」支援採択)。エンハンサーはメガベース単位で離れていても機能的である場合もあり、RNA-seqで取得したlncRNAのうちmRNAの遠位に存在するものについて効率よくスクリーニングできる。遺伝子トランスクリプトームについては、シングルセルで行える環境を既に構築しているが、一般的にコピー数の少ないlncRNAについても高感度検出できるように改変中である。
(ii) 統合解析による幹細胞動態解析:マウス脳オルガノイドの霊長類化度の最大化
神経幹細胞を蛍光標識し、且つ前項目までに得た霊長類特異的機能lncRNA候補を5つまで賦与し、シングルセルRNA-seqによる細胞動態改変状況の精密なプロファイリング、細胞動態イメージングも併せ、種特異的lncRNAの組合せ効果を最適に導く予定である。以下に、改変標的となる各神経幹細胞分化ステージに対応した研究進行のタイムテーブルを示した。計画書の冒頭の概要の項に示した図に示したように、発達時期に従って、順次lncRNAの同定・機能解析を進行していく。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Catholic University of Korea(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Catholic University of Korea
  • [雑誌論文] Inducible Kiss1 knockdown in the hypothalamic arcuate nucleus suppressed pulsatile secretion of luteinizing hormone in male mice2020

    • 著者名/発表者名
      Shiori Minabe, Sho Nakamura, Eri Fukushima, Marimo Sato, Kana Ikegami, Teppei Goto, Makoto Sanbo, Masumi Hirabayashi, Junko Tomikawa, Takuya Imamura, Naoko Inoue, Yoshihisa Uenoyama, Hiroko Tsukamura, Kei-Ichiro Maeda, Fuko Matsuda
    • 雑誌名

      Journal of Reproduction and Development

      巻: Epub ページ: Epub

    • DOI

      10.1262/jrd.2019-164

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Modeling of early neural development in vitro by direct neurosphere formation culture of chimpanzee induced pluripotent stem cells2020

    • 著者名/発表者名
      Ryunosuke Kitajima, Risako Nakai, Takuya Imamura, Tomonori Kameda, Daiki Kozuka, Hirohisa Hirai, Haruka Ito, Hiroo Imai, Masanori Imamura
    • 雑誌名

      Stem Cell Research

      巻: 44 ページ: 101749

    • DOI

      10.1016/j.scr.2020.101749

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ニューロンは神経活性化により新規DNAメチル化を介してエンハンサー活性を調節し、興奮性シナプス形成に影響する2019

    • 著者名/発表者名
      亀田朋典、今村拓也、滝沢琢己、三浦史仁、伊藤隆司、中島欽一
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 母体由来の炎症シグナルは胎仔脳が発現するサイトカインIL17Dにより緩和できる2019

    • 著者名/発表者名
      藤本雄一、亀田朋典、吉良潤一、中島欽一、今村拓也
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 母体由来の炎症シグナルは胎仔脳が発現するサイトカインIL17Dにより緩和できる2019

    • 著者名/発表者名
      藤本雄一、亀田朋典、吉良潤一、中島欽一、今村拓也
    • 学会等名
      第162回日本獣医学会学術集会
  • [学会発表] 母体由来の炎症シグナルは胎仔脳が発現するサイトカインIL17Dにより緩和できる2019

    • 著者名/発表者名
      藤本雄一、亀田朋典、吉良潤一、中島欽一、今村拓也
    • 学会等名
      第112回日本繁殖生物学会大会
  • [学会発表] Mecp2ノックアウトマウス新生仔海馬のシングルセルRNA-seq解析2019

    • 著者名/発表者名
      今村拓也、中嶋秀行、中島欽一
    • 学会等名
      第13回エピジェネティクス研究会年会
  • [学会発表] Neuronal activation can modulate enhancer activity through de novo DNA methylation2019

    • 著者名/発表者名
      Tomonori Kameda, Takuya Imamura, Takumi Takizawa, Fumihito Miura, Takashi Ito, Kinichi Nakashima
    • 学会等名
      ISSCR/KSSCR International Symposium(韓国)
    • 国際学会
  • [学会発表] Neuronal activation can modulate enhancer activity through de novo DNA methylation2019

    • 著者名/発表者名
      Tomonori Kameda, Takuya Imamura, Takumi Takizawa, Fumihito Miura, Takashi Ito, Kinichi Nakashima
    • 学会等名
      The 10th IBRO World Congress of Neuroscience(韓国)
    • 国際学会
  • [学会発表] Rett症候群原因因子MeCP2はmiR-199a介して神経幹細胞の分化運命決定を制御する2019

    • 著者名/発表者名
      中嶋秀行、辻村啓太、入江浩一郎、今村拓也、石津正崇、Pan Miao、中島欽一
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 転写因子SOX8はNFIAと協調的に胎生期神経幹細胞のアストロサイト分化を促進する2019

    • 著者名/発表者名
      竹生田淳、堅田明子、今村拓也、中島欽一
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 胎生期神経幹細胞のアストロサイト分化能獲得における転写制御共役因子Trim28の機能解析2019

    • 著者名/発表者名
      中川拓海、今村拓也、堅田明子、中島欽一
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [図書] 次世代シークエンサーDRY解析教本 改訂第2版(清水厚志・坊農秀雅 編集)2019

    • 著者名/発表者名
      佐野坂司・今村拓也(分担執筆)
    • 総ページ数
      384
    • 出版者
      学研メディカル秀潤社
    • ISBN
      978-4-7809-0983-8
  • [備考] iPS細胞を使ってチンパンジーの初期神経発生を誘導 -ヒト脳進化の解明に向けたiPS細胞研究に道-

    • URL

      http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/200228_2.html

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公開日: 2021-01-27  

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