研究課題/領域番号 |
19H03141
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
林 純一 筑波大学, 筑波大学, 名誉教授 (60142113)
|
研究分担者 |
米川 博通 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 研究員 (30142110)
高橋 智 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50271896)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ヒト老化 / ミトコンドリア呼吸欠損 / 細胞分裂阻害 / SHMT2遺伝子 / GCAT遺伝子 / 一炭素代謝 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はShmt2とGcat遺伝子破壊マウスを用いて応募者の仮説「ヒトの老化で進行するゲノム修飾の一部は短命ではなく長寿に貢献する」を検証することである。 実験1:Shmt2破壊ヘテロマウス(Shmt2+/m)が長寿になるかの寿命調査:Shmt2破壊ヘテロマウス(Shmt2+/m)はこの遺伝子の発現量が半分であるため細胞分裂が抑制されることでがん化も抑制され寿命が延長される可能性を確かめる。 実験2:Shmt2破壊ホモマウス(Shmt2m/m)の胚致死の原因を解明:Shmt2遺伝子破壊により胎児肝臓の血球細胞特異的に一炭素代謝産物異常が生じていること、そしてこれにより血球細胞の細胞分化と細胞分裂が阻害され胎児貧血になることが胚致死の原因であることを明らかにした。この研究成果はScientific Reports 9: 16054 (2019)に公表し実験2は目的を達成した。 実験3:胚致死と老化のレスキュー実験:ヒトの胎児でもSHMT2遺伝子の異常が原因となる胚致死があるかも知れないので、妊娠メスに葉酸やグリシンなどの栄養素(サプリメント)を投与したが、 Shmt2破壊ホモマウス(Shmt2m/m)を胚致死からレスキューできなかった。 実験4: Shmt2m/m胚から樹立したMEFsを用いて細胞のがん化への影響調査:Shmt2破壊ホモマウスの胚からShmt2m/mMEFsを樹立し、さらにこの細胞株の不死化に成功した。Shmt2破壊は細胞分裂を抑制するため、不死化細胞のがん化も抑制される可能性を調査する。 実験5:Gcat破壊ホモマウス(Gcatm/m)とGcat遺伝子を破壊していないマウスをそれぞれ20頭以上準備し寿命調査を開始した。Gcat破壊ホモマウスにも Gcat破壊センチュウと同じホルミシス効果が出現するとすれば、センチュウ同様長寿になる可能性が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験1:Shmt2破壊ヘテロマウス(Shmt2+/m)が短命か長寿かの寿命調査:新型コロナ感染対策の一環として、筑波大学の動物飼育施設の飼育規模縮小の要請に従ったため恒常的に十分な飼育スペースを確保できず、また実験5を最優先にして飼育を継続するため、本実験は中止にした。 実験2:Shmt2破壊ホモマウス(Shmt2m/m)の胚致死の原因を解明:この研究成果はScientific Reports 9: 16054 (2019)に公表し目的を達成した。 実験3:胚致死のレスキュー実験:実験1同様、マウスの飼育スペース削減のため本実験は当面の間中断している。 実験4: Shmt2m/m胚から樹立したMEFsを用いて細胞のがん化への影響:細胞のがん化を確認するには長期にわたるマウスの飼育が必要であり、本実験も当面の間中断している。 実験5:Gcat破壊ホモマウス(Gcatm/m)とGcat遺伝子を破壊していないマウスの寿命調査:現在も継続中である。本実験の飼育スペースを確保することを最優先にして他の実験計画を中止、または中断にした。
|
今後の研究の推進方策 |
実験1:Shmt2破壊ヘテロマウス(Shmt2+/m)が短命か長寿かの寿命調査:Shmt2破壊ヘテロマウス(Shmt2+/m)とShmt2遺伝子を破壊していないマウス(Shmt2+/+)をそれぞれ20頭以上の飼育を開始したが、寿命調査にはさらに1年以上の飼育が必要である。しかし、新型コロナ感染対策として国が出した緊急事態宣言への対応の一環として、筑波大学の動物飼育施設の飼育規模縮小の要請に従ったため飼育スペースが不十分で本実験は中止にした。 実験2:Shmt2破壊ホモマウス(Shmt2m/m)の胚致死の原因を解明し、Scientific Reports 2019に公表することでこの実験は完了した。 実験3:胚致死のレスキューする栄養素の解明は成功しなかった。妊娠メスに葉酸やグリシンなどの栄養素(サプリメント)を投与しても Shmt2破壊ホモマウス(Shmt2m/m)を胚致死からレスキューできなかった。今後は他の栄養素との組み合わせ投与を行う予定であったが、本実験は当面の間中断することとした。 実験4: Shmt2m/m胚から樹立したMEFsを用いて細胞のがん化への影響を明らかにするため、Shmt2破壊ホモマウスの胚からShmt2m/mMEFsを樹立し、さらにこの細胞株の不死化に成功した。今後は不死化した細胞株を用いて、がん化やがんの増殖が抑制されるかどうかを明らかにする予定であったが、本実験も当面の間中断することとした。 実験5:Gcat破壊ホモマウス(Gcatm/m)とGcat遺伝子を破壊していないマウスをそれぞれ20頭以上準備し寿命調査中である。今後は一部のGcat破壊ホモマウスの各組織のメチオグ リオキサール(MGO)定量をHPLCを用いて一定期間毎に行い、Gcat破壊ホモマウスにも Gcat破壊線虫と同じMGOによるホルミシス効果が出現しているか否かを明らかにする。
|