研究実績の概要 |
多くの動物は受精を経ず卵子だけから個体発生する単為発生を生殖戦略の1つとして採用してきた。一方、哺乳類の単為発生胚は発生途中で致死となる。これは、哺乳類だけが配偶子特異的な遺伝子修飾「ゲノムインプリンティング」を保有するためである。近年では、遺伝子工学と発生工学を駆使して、ゲノムインプリンティングを操作することにより、単為発生マウスを得られるようになった。しかし、インプリント遺伝子の発現調節領域のゲノムの改変が必要なことや、発生段階の異なる卵子を準備して一連の核移植操作を行なう必要があるなどマウス以外の哺乳類には適用が難しいものであった。本研究では、我々が最近開発した高効率エピゲノム編集法(Nature Biotechnology, 2016)により、ゲノムを一切改変することなく、遺伝子修飾のみを書き換えることによって卵子から単為発生マウスの作製を試みる。 前年度はエピゲノム編集によりH19-DMRをメチル化させたPgES由来個体を4倍体補完法により作製したところ、通常妊娠9.5日目で死亡するが、妊娠13.5日目で帝王切開したところ、胎児形成を確認することができた。今年度は、DlkI/Gtl2の発現を補うためにIG-DMRの過剰メチル化を行なった。dCas9-SunTag、scFv-GFP-DNMT3bおよび4ヶ所のgRNAをコトランスフェクションし、3日間の薬剤選抜を行なった。H19-DMRとIG-DMRの両領域を過剰メチル化させたES細胞を用いて4倍体補完法による個体作製を試みたが、出生には至らなかった。
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