研究課題/領域番号 |
19H03146
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三浦 智行 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (40202337)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多剤併用療法 / 機能的治癒 / 動物モデル / 感染症 / アカゲザル |
研究実績の概要 |
HIV 感染症の機能的治癒達成には、ウイルスを保持する組織および細胞(ウイルスリザーバー)を排除する必要がある。多剤併用療法下でウイルスリザーバーを傷害することで、治療中断後のウイルス制御の可能性をサルエイズモデルにより検証する事を本研究課題の目的とする。具体的には多剤併用療法下のSIV感染サルに対してウイルスリザーバーを傷害する抗体を処置した後、多剤併用療法中断後の血中ウイルス量を調べることによってウイルス制御効果の有無を明らかにする。 1.ウイルス感染:実験群として3頭のアカゲザルにSIV239 を2000 TCID50 静脈内接種した。ウイルス接種前から経時的に採血し、末梢血リンパ球サブセットの動態を追跡した。経時採血した血液から血漿を分離、ウイルスRNA 量を追跡し、病態進行を把握した。 2.cART:ウイルス接種8週後より抗HIV 薬として、AZT (150 mg)、3TC (75 mg)、 TDF (150 mg)、LPV (200 mg)およびRTV (50 mg)(いずれも経口用錠剤)を粉砕し、同じく粉砕した実験動物用固形飼料およびバナナと混合、成型し通常のエサの代わりに1日2回給餌した。cART により血漿中ウイルスRNA 量が検出限界以下に抑制される迄追跡した。 3.抗体処理:実験群に抗CD4 抗体を週1回8週間静脈内投与した。投与直前に血液、リンパ節および直腸組織を生検し、抗体処理前の対照とした。投与後末梢血中でCD4 陽性細胞が完全に枯渇した所で、直腸およびリンパ節生検を行い、組織における枯渇効果を明らかにした。 4.cART の中断:抗CD4 抗体投与終了後、末梢血のCD4 陽性細胞数が回復するのを待ってcART を中断した。現在、cART 中断後のウイルス制御を血漿中ウイルスRNA 量の動態を中心に観察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年6月までに、事前準備、予備実験を行い、令和2年3月までに、感染実験の実施、実験結果の解析、研究成果の取り纏めを行う予定であった。しかし、令和元年6月、予備実験をした結果、当初の想定に反し、用いた量の抗CD4抗体により、接種サルのリンパ節において充分なCD4陽性細胞の減少効果が得られていないことが判明した。研究遂行上、リンパ節におけるCD4陽性細胞の減少が不可欠なため、抗CD4抗体量を増量した予備実験を追加して実施する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画では、リザーバー傷害の方法として、1)リンパ節のCD4 陽性T 細胞を抗体により傷害する[細胞マーカーによるリザーバー傷害]、2)ヒストン脱アセチル化(HDAC)阻害によるプロウイルス発現抑制解除を介したウイルス保持細胞破壊[プロウイルス性リザーバー傷害]、3)上記2つの方法を組み合わせる、ということを計画していた。しかしながら、抗CD4抗体処置に想定外の時間と費用が必要であったことから、本研究では抗CD4抗体処置によるリザーバー傷害の実験に集中して遂行することとしたい。
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