HIV 感染症の機能的治癒達成には、ウイルスを保持する組織および細胞(ウイルスリザーバー)を排除する必要がある。多剤併用療法下でウイルスリザーバーを傷害することで、治療中断後のウイルス制御の可能性をサルエイズモデルにより検証する事を本研究の目的とした。 4頭のアカゲザルにSIVmac239感染させると、感染2週後に血中ウイルス量は106~107コピー/mlのピークに達し、感染10週後には104~106コピー/mlのセットポイントに移行した。その後、cART治療+抗体投与群の3頭に対しcART治療を開始すると、3頭中2頭で血中ウイルス量が感染20週後に検出限界以下に抑制され、残り1頭は103コピー/mlまで減少した。血中ウイルス量が十分に減少したため、感染21週後から抗CD4抗体の投与を開始した。計8回投与後、末梢血中のCD4+T細胞は枯渇し、リンパ節中と直腸中のCD4+T細胞は抗体投与前と比較し、それぞれ75~89%、85~98%減少した。すなわち、抗CD4抗体投与により全身のCD4+T細胞サイズが減少したと考えられた。しかしながら、抗体投与後の抗体投与単独群の血中ウイルス量は末梢血、リンパ節、直腸中のCD4+T細胞がほぼ枯渇したのにもかかわらず、血中ウイルス量に大きな変化はなかった。cART治療+抗体投与群の3頭は末梢血中のCD4+T細胞の回復後、cARTを中断し、ウイルスリバウンドの動態を評価した。その結果、3頭ともcART中断後すぐにウイルスリバウンドが起こった。従ってCD4+T細胞の減少だけではウイルスリバウンドには影響がないことが明らかとなった。しかし、3頭中1頭はウイルスリバウンドが一過的であり、血中ウイルス量は検出限界付近を推移し、抗体投与によりウイルス抑制効果が示唆された。今後、投与方法の検討によるウイルス抑制効果の改善が期待される。
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