研究課題
本課題では、遺伝学、免疫学および病理学の多面的な解析から、CIAと関連するMHC多型、CIAの重症度を規定する多型マーカーやバイオマーカーの同定等、CIA発症と関連する遺伝要因を明らかにすることを目的とする。本年度では、フィリピン産カニクイザル9頭を用いて、ウシtype IIコラーゲンを完全フロイントアジュバント (CFA) とともに背部皮下に注射し、コラーゲン誘導関節炎 (CIA) の発症を観察した。その結果、3頭にてCIAの発症を認めた (33%)。既報で用いられたカンボジア産カニクイザルにおける発症率 (81%) よりも極めて低い割合であったことから、この値は産地間の違いを反映していると考えられた。試験個体9頭のMHC遺伝子 (Mafa遺伝子) のDNAタイピングを実施した結果、CIAを発症した3頭の内の2頭は、同一のMafa-DRBアレルを有していたが、そのアレルはその他の試験個体では認められなかった。また、その他のMafa遺伝子 (Mafa-A, Mafa-B, Mafa-I, Mafa-DPB1) においてもtype IIコラーゲンに対して感受性を示すアレルは認められなかった。よって、RAと同様にCIAにおいても感受性を示す遺伝子はMHC-DRB座であることが示唆された。試験個体9頭の血清を用いて、ウシtype IIコラーゲンに対するIgG抗体価をELISA法により比較した結果、発症個体では、免疫後3週目におけるIgG抗体価の上昇を認めた。一方、非発症個体では、免疫後3週目におけるIgG抗体価の上昇を認めないか、認めても抗体価は低値であった。また、病理学組織学的検索では、発症個体の関節には、軟骨のびらんと破壊が見られ、好中球浸潤を伴う滑膜炎も観察された。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題の根幹を成すフィリピン産カニクイザルを用いたCIAモデルを作製することができたこと、それらを活用した種々の実験成果が計画通りに得られていることから、概ね順調に進展していると言える。また、研究開始当初からの目的に変更は無く、大きな計画変更も無い。
今後は、コラーゲン接種前後のMHC遺伝子の遺伝子発現量の変化を明らかにする。また、MHC遺伝子からリウマチ感受性遺伝子のカニクイザルオーソログにおける多型解析やヒトとの比較解析を実施する。また、CIA発症と関連する感受性MHC分子に結合するⅡ型コラーゲン由来のペプチドを同定し、発病の原因となるTリンパ球の性状を明らかにする。さらには、HE染色による病理組織診断の他、免疫染色により免疫細胞の浸潤細胞数を測定し、感受性と抵抗性のMHCアレルをそれぞれ持つカニクイザルの間で比較解析することを目指す。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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