研究課題
癌転移開始細胞(以下MICと略す)は、原発癌に巣喰う微量な細胞集団で、癌転移を積極的に仕掛ける。MICの制圧が癌転移抑止に必須であるが、MICの特異抗原が不明であるなど、未解明な点が多い。我々はスキルス胃癌患者より細胞株を樹立し、独自にMIC実験モデルを立ち上げてきた。その解析により「MICで高発現するZIP10という分子が、癌転移と密接な関係にある」という知見を得てきた。この成果を基に以下の3点を目的に掲げる。すなわち、MICに高発現するZIP10をゲノム編集でKOし、①癌転移におけるZIP10の生物学的意義を解明、②ZIP10がin vivoで癌転移抑止の分子標的になり得るか否か、③患者血中循環癌細胞を対象にZIP10が癌転移のマーカーになり得るか否か、以上3点の証明を目的とする。昨年度までの検討で、スキルス胃癌株から単離したMICにおいてZIP10が高発現することを証明し、またその高発現するZIP10をゲノム編集でKOしたMICを作製した。このZIP10-KO MICでは、抗癌剤に対する耐性度が変化することが分かった。研究過程で明らかになってきた別の亜鉛輸送タンパク質と想定される分子の同定実験も継続して行っている。キメラ抗原受容体発現T細胞療法の検討として、海外企業数社と共同研究の協議を行った。癌転移開始細胞MICで高発現するZIP10の生物学的意義の解明につながる研究成果を積み重ね、ZIP10を分子標的とした新しい癌転移抑止法の確立につなげていきたいと考えている。
3: やや遅れている
コロナ禍の関係で、海外製の試薬や実験材料が入ってこない・入手できないなど他、実験に遅れが出ているため、国内製の試薬や実験材料に置き換えて実験するなど、対応が必要であった。
実験計画に従い、また試行錯誤的な実験を乗り越えて、成果を上げていきたい。新しい知見も出てきて、今後さらなる研究が必要と考えらえれた。
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Clinical and Experimental Nephrology
巻: 25 ページ: 1035-1046
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BPB Reports
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