本研究の目的は、多産、容易な飼育・繁殖、マウスよりも早い世代交代などを特長とするゴールデンハムスターに着目し、マウスで未解明の遺伝子のCRISPR/Cas9 KOおよびノックイン(KI)モデルの作出を試みることにある。また、得られた改変動物系統を保存するための信頼性の高い胚凍結保存法も開発する。本年度も引き続き、1)ハムスターノックアウト(KO)技術の効率化および2)ハムスター胚の凍結保存技術の開発を行なった。 1)ハムスターKO技術の効率化では、in vivo 卵管内 electroporation であるGONAD法の実験条件の適切化を行った。昨年度は、抗インヒビン血清と eCG (equine chorionic gonadotrophin) の1:1 混合液を Day 1 に注射することにより、妊娠率と出産数の向上に成功したので、それを用いた新たな KO 動物の作出を開始した。その結果、新たに精子の超活性化運動に関わる可能性のある遺伝子の KO ハムスターの作出に成功した。 2)ハムスター胚の凍結保存技術の開発では、昨年度に引き続き、自然交配3日後の8-16細胞期胚を子宮灌流により採取し、凍結保存を行った。偽妊娠雌に移植すると、妊娠が生じない場合が多いため、妊娠雌へ移植することで、初めて凍結融解胚由来の産子作出に成功した。また、昨年度から開始した精子凍結法に応用するために、人工授精法の開発を開始した。新鮮精子を用いた場合、子宮への人工授精では安定して受精卵が得られたが、卵管への人工授精では成功率が低かった。卵管への人工授精は、少ない精子数に対応できると期待されるので、今後さらに技術開発を進めたい。
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