研究課題
本研究の目標は、細胞分化に際する一細胞レベルのエピゲノムおよびトランスクリプトームデータから、ヒストンバリアントの取り込みがもたらす細胞分化を規定するエネルギー地形の変化を明らかにし、明らかにすることである。本研究では、ヒストンバリアントの取り込みによるエネルギー地形変化を捉え、異なるエピゲノム状態のダイナミクスが与える細胞分化の方向性や分化速度の制御機構の解明を進めている。本研究提案では、独自に開発した数理手法および少数細胞エピゲノムプロファイル法(ChIL)を用いて、取得した一細胞データからデータ駆動的にエピジェネティックランドスケープの直接的構築を試みている。現在、解析を行ってきたヒストンH3バリアント群を解析対象として、世界に先駆けて開発した少数細胞エピゲノム解析技術を駆使し解析を進めている。本年度は、H3バリアント群(H3mm15, H3mm18)について解析を行い、論文投稿の準備を進めている。さらに技術開発として、独自のin situエピゲノム解析手法、並びに単一細胞データから時間構造を推定する新規数理手法について開発を進めている(投稿準備中)。加えて、擬似的な時間情報を補った単一細胞データから遺伝子発現のポテンシャルを推定することを目的とし、状態空間モデルを用いた連続潜在変数(発現ポテンシャル)の推定法の開発を行った。共同研究として、少数細胞エピゲノムプロファイル法(ChIL)の高効率化に関わる酵素の活性についての詳細な報告や、がん細胞におけるクロマチン構造研究について論文成果(2報)を挙げた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、エピゲノムデータの取得およびランドスケープ推定のための数理手法の開発を進めることができており、進捗は順調である。
研究計画は順調に推移しており、今後の当初計画に基づく研究開発を遂行していく。特に、ChIL技術を応用し、既知のエピゲノムの作用機序に基づいて、各シングルセル同士のペアワイズに時間的な前後関係を与えることで、データ全体の時間構造を再構築し、エピゲノムプロファイルを経時的に追跡する方法を開発していく。再構築した時間構造に対して、データ駆動的ダイナミクス推定法を適用することで、発現やエピゲノム状態の時間発展を再推定し、「細胞集団が分化へと向かう状態の時間発展」のルートを辿ることの可能な分化ポテンシャルの計測を試みる。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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